日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案(10)鑑別疾患
日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案を考える(10)鑑別疾患
日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案を考える(インデックス)
詳細はこちら:http://www.jsth.org/committee/pdf/DIC_3.pdf
<新しいDIC診断基準> 鑑別すべき代表的疾患・病態
DICとの鑑別が必要となる代表的疾患・病態を表2に記載しました。
ただし、表2に示された疾患にDICを合併することもあるために注意が必要です。
表2 鑑別すべき代表的疾患・病態
血小板数低下
1. 血小板破壊や凝集の亢進
・ 血栓性微小血管障害症(TMA):血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、HELLP症候群、造血幹細胞移植後TMA
・ ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
・ 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群(APS)
・ 体外循環 など
2. 骨髄抑制/骨髄不全をきたす病態
・ 造血器悪性腫瘍(急性白血病、慢性骨髄性白血病の急性転化、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫の骨髄浸潤など)
・ 血球貪食症候群
・ 固形癌(骨髄浸潤あり)
・ 骨髄抑制を伴う化学療法あるいは放射線療法中
・ 薬物に伴う骨髄抑制
・ 一部のウイルス感染症
・ 造血器悪性腫瘍以外の一部の血液疾患(再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、巨赤芽球性貧血など)
3. 肝不全、肝硬変、脾機能亢進症
4. 敗血症
5. Bernard-Soulier症候群、MYH9異常症(May-Hegglin異常症など)、Wiskott-Aldrich症候群
6. 希釈
・ 大量出血
・ 大量輸血、大量輸液
・ 妊娠性血小板減少症 など
7. 偽性血小板減少症
FDP上昇
1. 血栓症:深部静脈血栓症、肺塞栓症など
2. 大量胸水、大量腹水
3. 大血腫
4. 線溶療法
フィブリノゲン低下
1. 先天性無フィブリノゲン血症、先天性低フィブリノゲン血症、フィブリノゲン異常症
2. 肝不全、低栄養状態
3. 薬物性:L-アスパラギナーゼ、副腎皮質ステロイド、線溶療法
4. 偽低下:抗トロンビン作用のある薬剤(ダビガトランなど)投与時
プロトロンビン時間延長
1. ビタミンK欠乏症、ワルファリン内服
2. 肝不全、低栄養状態
3. 外因系凝固因子の欠乏症またはインヒビター
4. 新規経口抗凝固薬内服
5. 偽延長:採血量不十分、抗凝固剤混入
アンチトロンビン活性低下
1. 肝不全、低栄養状態
2. 炎症による血管外漏出(敗血症など)
3. 顆粒球エラスターゼによる分解(敗血症など)
4. 先天性アンチトロンビン欠乏症
5. 薬物性:L-アスパラギナーゼなど
TAT、SF または F1+2上昇
1. 血栓症:深部静脈血栓症、肺塞栓症など
2. 心房細動の一部
注)ただし、上記疾患にDICを合併することもある。
日本血栓止血学会DIC診断基準暫定案を考える(インデックス)
<リンク>
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20| DIC