金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2015年11月09日

症例から学ぶDIC(8)症例2の臨床経過

症例(2)
症例から学ぶ播種性血管内凝固症候群(DIC)(インデックス)

<臨床経過>

経過



本症例は残念ながら生前診断されることなく剖検診断となった症例です。

右肺動脈原発平滑筋肉腫の症例でした。

基礎疾患の治療はなされなかったため経過を通して基礎疾患は次第に悪化した症例ですが、DICは軽快した点を強調したいと思います。


線溶亢進型DICに対しては抗プラスミン作用(抗線溶作用)も強力な合成プロテアーゼインヒビターであるメシル酸ナファモスタット(フサン®)が相性の良い薬剤です。

本症例でも、フサン投与により速やかに、TAT、PICは低下して、α2PIは1〜2日レベルで回復しました。

FDP、Dダイマーも奇麗に低下しています。

血小板数の回復はみられない線溶亢進型DICは、しばしば経験されます。

線溶亢進型DICでは治療によって血小板数が不変であってもDICは軽快していないと誤判断しないようにしたいところです。


入院時にみられていた著明な出血症状は翌日にはほとんど消失していました。

メシル酸ナファモスタットの劇的な臨床効果を実感できた症例です。

フサン投与中は高K血症の副作用には注意する必要があります。

なお、メシル酸ガベキサート(FOY®)にはフサンに見られるような強力な抗線溶効果はみられず、線溶亢進型DICには無効です。


11月に入りフサンの効果に限界が見られるようになったために、へパリン&トラネキサム酸(トランサミン®)併用療法に切り替えたところ、DICは再度コントロールされました。

当時はへパリン&トラネキサム酸併用療法の症例経験が現在よりも遥かに乏しかったために、へパリン類5,000単位/24時間、トラネキサム酸3g/24時間の用量で開始になっていますが、現在であればへパリン類10,000単位/24時間、トラネキサム酸1.5g/24時間から開始したのではないかと思われます。

本症例は途中で上大静脈症候群を合併したために、へパリン増量、トラネキサム酸減量がなされていますが、現在の考え方ではへパリンはもっと高用量であっても良かったと考えられます。

症例から学ぶ播種性血管内凝固症候群(DIC)(インデックス)

 
<リンク>
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20| DIC