特発性血小板減少性紫斑病:医師国家試験
第110回医師国家試験の問題紹介と解説です。
特発性血小板減少性紫斑病でみられるのはどれか.
a 大球性貧血
b 白血球減少
c 網血小板比率低下
d トロンボポエチン値低下
e 骨髄巨核球数正常または増加
(ポイント)
特発性血小板減少性紫斑病は、血小板に対する自己抗体が出現して、血小板が脾臓で破壊されるために、血小板数が低下する後天性の出血性疾患です。
骨髄巨核球における血小板産生は維持されています。
血小板が盛んに産生されるために幼若な血小板(網血小板)の比率は高くなります。
トロンボポエチンは、主に肝臓で産生されて、巨核球からの血小板産生を刺激する造血因子です。
血中トロンボポエチン値は、再生不良性貧血や化学療法後の血小板減少期では高値となりますが、特発性血小板減少性紫斑病ではあまり上昇しません。
(解説)
a 血小板数低下のために活動性の出血がありますと、鉄欠乏性貧血(小球性低色素性貧血)をきたすことがありますが、大球性貧血とはなりません。貧血のない特発性血小板減少性紫斑病も多いです。
b 再生不良性貧血では白血球減少をきたしますが、特発性血小板減少性紫斑病では白血球減少はみられません。
c 血小板の産生が亢進していることを反映して、幼若血小板比率(網血小板比率)は上昇します。
d 血中トロンボポエチン値は、再生不良性貧血や化学療法後の血小板減少期では高値となりますが、特発性血小板減少性紫斑病ではあまり上昇しません(軽度上昇に留まります。著増している場合には特発性血小板減少性紫斑病の可能性が低いです)。
e 骨髄巨核球数は再生不良性貧血では低下しますが、特発性血小板減少性紫斑病では低下しません(正常または増加)。
(正解) e
(備考)
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療
血小板数が3万/μL以上あって、無症状なら経過観察が良いです。
1)ピロリ菌の除菌療法:ピロリ菌陽性であれば是非とも行うべき治療です。副作用はほとんどなく、約6割の患者で、血小板数が回復します。
蛇足なら、管理人はITP患者がピロリ菌陽性であると嬉しい気持ちになります。
2) 副腎皮質ステロイド療法:血小板に対する自己抗体を消失させることを期待した治療です。
3)脾摘:除菌療法やステロイド療法が無効であった場合に考慮します。血小板破壊の場となる脾臓を除去して、血小板が破壊されないようにすることを期待した治療です。
4) 免疫グロブリン大量療法:通常は脾摘の1週間前から点滴で投与します。効果は一時的であるため、原則として脾摘とセットで考慮する治療です。
5)トロンボポエチン受動態作動薬:巨核球・血小板産生刺激因子であるトロンボポエチンの受容体に結合し,巨核球の成熟を促進し血小板産生を亢進させる薬剤です。有効率は8〜9割と高いですが、未知の副作用出現の可能性を否定できず、第一選択薬にはなりません。また、血栓症の副作用も報告されています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00| 医師国家試験・専門医試験対策