血友病:医師国家試験
第110回医師国家試験の問題紹介と解説です。
血友病に特徴的な出血部位はどれか.
a 歯肉
b 皮下
c 関節内
d 鼻粘膜
e 口腔粘膜
(ポイント)
出血のパターンや部位によって疾患を推測できることがあります。
特に、血友病A&Bにおける関節内出血は有名です。ただし、後天性血友病では、関節内出血は例外的です。
(解説)
a 歯肉出血は、血小板数や血小板機能が低下した場合にみられやすいです。
b 皮下出血は、凝固異常の疾患でみられます。ビタミンK欠乏症、DICなどでみられます。
c 関節内出血と言えば、血友病があまりに有名です。少なくとも国家試験レベルであれば、1対1と思って良いです。
d 鼻出血は、粘膜出血の一症状です。血小板数や血小板機能が低下した場合にみられやすいです。von Willebrand病(血小板粘着能が低下)の鼻出血は有名です。遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)でもみられます。
e 口腔出血も粘膜出血の一症状です。鼻出血と同様の病態でみられやすいです。
(正解) c
(備考)
<出血の部位と疾患の関係>
1) 関節内出血:血友病A&B。
2) 筋肉内出血:血友病A&B、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)。
3) 粘膜出血(鼻出血、歯肉・口腔粘膜出血、消化管出血、血尿、女性性器出血など):血小板数や血小板機能が低下した疾患でみられやすいです。特に、幼少時から鼻出血がみられやすい場合は、von Willebrand病を疑います。
4) 四肢末梢(特に下肢)の左右対照性紫斑:アレルギー性紫斑病(腹痛、関節痛、腎障害(IgA腎症))を伴うことがあります。
5) 臍帯出血:先天性第XIII因子欠損症。
6) 前腕伸側、手背の紫斑(高齢者)赤紫色で境界明瞭、部位を変えて出没(全ての凝血学的検査は正常):老人性紫斑
7) タール便(黒色便):上部消化管(胃、十二指腸など)からの出血。
8) 紫斑
・ 点状出血(petechiae、径1〜5mm):血小板や血管が原因の出血傾向。
・ 斑状出血(ecchymosis、径数cm以内):凝固異常が原因の出血傾向。
・ びまん性出血(suggillation、面積の比較的大きな皮下出血):凝固異常が原因の出血傾向。
<出血傾向の原因(分類)>
1) 血小板数数の低下:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、再生不良性貧血など。
2) 血小板機能の低下:血小板無力症、von Willebrand病、NSAID(非ステロイド系消炎鎮痛剤)(アスピリンなど)内服、尿毒症など。
3) 凝固異常:血友病A、血友病B、後天性血友病、ビタミンK欠乏症など。
4) 線溶過剰亢進:線溶亢進型DIC( 1)2)の要素も)など。
5) 血管壁の異常:アレルギー性紫斑病(Schoenlein-Henoch紫斑病)、単純性紫斑、老人性紫斑、遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)など。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09| 医師国家試験・専門医試験対策