超高齢社会を見据えた未来医療予想図(15)学生教育
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報からです。
今回は、特別講演です。
飯島勝矢先生 特別講演
(金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会:平成27年6月21日)
超高齢社会を見据えた未来医療予想図(15)
〜フレイル予防からケアまでを俯瞰した地域包括ケアシステム構築〜」
<学生教育>
あともう一つ、医学部の学生教育です。
文科省事業の期限付き5年間プロジェクトである「未来医療研究人材養成」(テーマA:メディカル・イノベーション推進人材の養成、テーマB:リサーチマインドを持った総合診療医の養成)は、東大はBの方でシナリオ書かせて頂いて、東大医学部の中に「在宅医療学拠点」というものを作りました。
そんな大所帯ではなくて、事務員入れても5〜7人かぐらいの人数です。
といいましても、東京大学は当然世の中から何を求められているかをある程度自分でわかっているつもりなので、これを作るときも医学部長、病院長含めて上層部との接触が2転3転繰り返して、やっとやってみるという経緯でした。
何をやろうかって時に在宅医療っていうのは当然診療ですから、今日も明日も例えば今日10件、明日10何件という事では全くありません。
<在宅医療学>
在宅医療の学問体系化は見えていません。
在宅医療関連学会もあって、学術集会に行ってみますと1例報告が多いです。
当院の取り組みとか、こういう症例がありましたとか、いわゆる学問体系化されていません。
当然循環器内科学、血液内科学、呼吸器内科学というところまで、すっとあがる分野ではないですが、最終的に在宅医療学、在宅医学みたいな方向性にブラッシュアップして行く為に、また学問体系化して行く為には、研究をしなければいけません。
という事で、できればデータベース化していくところを狙っています。
例えば、何とか手術でまとめられるようなデータベースよりはもっと難しいデータベースですが、教育と研究の2トップのベクトルをしっかり出すと、そこにはちょっとしたフィールドが必要なため、臨床をつけています。
この方向性でやりたいと言ってOKをもらった経緯もあります。
地域医療、在宅医療の実習もしています。
といっても柏市なら柏で地域の先生に2週間学生をポーンと送りつけて、よろしくねってのも従来っぽいのですが、それはやりたくありません。
例えば訪問看護の日、ケアマネージャーと同行密着の日、病院の地域のソーシャルワーカー密着の日と言うような、日替わりをしています。
最終日は、柏市の高齢者市民に向けて発表します。
この2週間で何を見て、何を感じ、どう思ったかなど、市民に向けて発表します。
東大理IIIの学生達が開業医になることは非常に少ないのですが、結局は彼ら5〜6年生も1年後には国家試験通って病棟デビューする訳です。
そのときにターミナルの方とかいろんな病態の方をプライマリーケアの先生方に委ねる場面、医療情報提供書を書くという場面が早々に来ます。
その際、送り先を見た事が無くていいのかと思いまして、参加型という事でやっています。
例えばワールドカフェのスタイルで高齢者市民とおせんべいとお茶を飲みながらディスカッションしたり、模擬担当者会議もやっています。
6人1グループなのでくじを引かして、ある子はDr役、ある子は訪問看護役、ある子は訪問薬剤師役、ある子は奥さん役、と学芸会風になりますけど、最低限のシナリオは決まっていてその最低限のシナリオ以外のシナリオを全部自分で考えて発言してもらいます。
実はラグビー部のガタイの大きい学生が奥さん役になったりとか、学芸会風で面白い場面もあります。
彼らから在宅医療をするDrがどれだけ出るかまだわかりませんが、2年目に入ったばかりで、少なくとも大学からみるとパートナーとしての地域医療の場面をスタートの一週間をみてくる、しかもそこにお医者さんの背中だけではなくて、他の職種の背中をいっぱい見てくるという色合いの事にしています。
結果的にどうなるかっていうのは、もう一年くらいやってアンケートをとってやっていくしかないと思っています。
(続く)
★ 本稿は、東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生のご講演をを拝聴した事務局が原稿化したものです。もし内容に不正確な部分があった場合には当事務局の責任ですので、ご容赦お願いします。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23| その他