超高齢社会を見据えた未来医療予想図(16)フレイル
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報からです。
今回は、特別講演です。
飯島勝矢先生 特別講演
(金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会:平成27年6月21日)
超高齢社会を見据えた未来医療予想図(16)
〜フレイル予防からケアまでを俯瞰した地域包括ケアシステム構築〜」
<フレイル>
残りの時間を使ってフレイルの話をしたいと思います。
虚弱という漢字2文字は非常にネガティブな言葉で、うちの母親も80歳ちょっとですが、変形性のOAで、ダンス好きでも自分が虚弱であることは分かっています。
でも第三者から虚弱っぽいねと言われたくない本能があります。
我々日本老年医学会では、虚弱、高齢化の事を考えると、より早くから理にかなった介護予防事業や健康増進事業をやらないといけないと考えています。
いわゆるロコモ予防教室が全国あまたでやられています。
しかし、介護予防事業は、実はクリーンヒット打ちたかったのに打てなかったとされています。
そこにどうメスを入れるかですが、まずはこれも市民啓発ですが、市民側がどう考えるのか?から入らなければなりません。
そこで、虚弱という言葉の雰囲気をポジティブに変えたいと言う所から2、3年前から入りました。
そこで英単語をみてもフレイルティ一という言葉をおじいちゃんやおばあちゃん、高校生、大学生達が言ってくれるか、いや言ってくれないだろうって事で、形容詞ですが「フレイル」となりました。
実はカタカナ3文字で探してました。メタボ、ロコモ、○×△。。。三文字がみつかりませんでした。
4文字でしょうがないかとフレイルとしました。
結局、メタボ、ロコモ、フレイル、サルコ(サルコペニア)とこの4つのキーワードが誕生しました。
市民側が数年後には、おなか周りがビール腹している人をみれば、大学生が遠巻きに指をさして、あれメタボかもしれないよね、と今言える時代です。
メタボは国民用語になりました。
何故かというと中性脂肪の150って数字がカットオフでというのを後ろに隠し、腹回り中心にガイドラインを決めた事にあります。
<フレイルと国民運動論>
フレイルはどこからどこまでですかとよく聞かれます。
医学的にはスタート地点を決めた場合、そこから棺桶に入るまで死ぬまでは、シビアフレイルです。
全員フレイルですが、といっても在宅療養で厳しい戦いを強いられているシビアフレイルの方に、あなたフレイルかもって言ったときに意味があるのか考えると微妙です。
そこで市民啓発国民運動論のためにフレイルというカタカナを前面に出したので、国民運動論としてのフレイルの解釈はリバーシブルです。
どの段階、どのステージに置かれても良いので、自分で明日から頑張れば上に行けるかもしれないというレベルのフレイルをフレイルと呼ぼう、しかもそういう気持ちになってくれた時点でフレイルと意識して下さいとなっています。
ですから、国民運動論の意味で開始と最後がぼやけています。
うちの中学生の子供も虚弱という言葉が分かってきて、どういう意味かと聞けば、腰が曲がって杖歩行で、駅の階段を手すり使いながら上ってるおじいちゃんおばあちゃんの事を虚弱っていう、とある意味あたっていますが、それは「フィジカルフレイル」を言っています。
しかし、これが老年医学だけじゃなくて、老年学いわゆるジェロントロジーっていう学問体系で考えると「メンタルフレイル」と「ソーシャルフレイル」は避けて通れませんし、フィジカルフレイルの前にあるかもしれません。
(続く)
★ 本稿は、東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢先生のご講演をを拝聴した事務局が原稿化したものです。もし内容に不正確な部分があった場合には当事務局の責任ですので、ご容赦お願いします。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29| その他