凝固因子のカルボキシル化/ビタミン
CBTの再現と解説です。試験を受けた学生さんの記憶による再生のため、正確ではない部分があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
凝固因子の翻訳後カルボキシル化に関与するのはどれか.
a ビタミンA
b ビタミンC
c ビタミンD
d ビタミンE
e ビタミンK
(ポイント)
ビタミンK依存性凝固因子(第VII・IX・X・II因子)は、肝での生合成の最終段階で、ビタミンKの存在下で分子中のグルタミン酸のγ-カルボキシル化を生じ、このことにより凝固因子活性を有するようになります。
(選択肢)
a, b, c, d:ビタミンA・C・D・Eは、凝固因子のカルボキシル化とは無関係です。
○e:ビタミンKは、凝固因子のカルボキシル化に関与しています。
(正答)e
(解説)
ビタミンKのKの由来は、オランダ語のKoagulation(英語ではCoagulation)の頭文字に由来しています。
文字通り凝固因子のためのビタミンです。
また脂溶性ビタミンであり、その吸収には胆汁の存在を必要とします(閉塞性黄疸ではビタミンK欠乏症になりやすいです)。
ビタミンK依存性凝固因子として、半減期の短い順番に第VII因子、第IX因子、第X因子、第II因子(プロトロンビン)の4つの凝固因子が知られています。
これらの凝固因子は肝での生合成の最終段階で、ビタミンKの存在下で分子中のグルタミン酸のγ-カルボキシル化を生じ、このことによりカルシウム結合能を獲得し、血小板のリン脂質と結合できるようになります。
ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)投与下やビタミンK欠乏状態では、グルタミン酸のγ-カルボキシル化が障害されて、PIVKA(protein induced by vitamin K absence)が出現します。
PIVKAはカルシウム結合が障害されており、凝固活性を有さず出血傾向をきたします。
ただし、適切なモニタリングの下にワルファリンによって適度なビタミンK欠乏状態にすれば、あまり出血の副作用をきたすことなく血栓症の発症を抑制することが可能です。
<ビタミンK依存性蛋白>
1) 凝固因子:第VII・IX・X・II因子
2) 凝固阻止因子:プロテインC、プロテインS(国試既出)
3) 骨関連蛋白:オステオカルシン(ワルファリンの催奇性と関連)
<ビタミンK欠乏症になりやすい病態>
1) 食事摂取量の低下:ビタミンKの摂取も低下するため。
2) 閉塞性黄疸:脂溶性ビタミンであるビタミンKは、胆汁がない状況では吸収されにくいため。
3) 抗生剤の使用:ビタミンKの産生部位である腸内細菌を死滅させてしまうため。
<リンク>
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