血小板数低下:PT・APTT正常、異形細胞なし、紫斑(あざ)
CBTの再現と解説です。試験を受けた学生さんの記憶による再生のため、正確ではない部分があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
20代の女性.易疲労感を主訴に来院.月経は正常.腕にあざがある.
検査の結果,赤血球350万,白血球6000,血小板1.5万,PT・APTT正常.
骨髄穿刺では異形細胞が認められなかった.
診断はどれか.
a 悪性貧血
b 鉄欠乏性貧血
c 再生不良性貧血
d 自己免疫性溶血性貧血
e 白血病
f 血友病
g 遺伝性球状赤血球症
h サラセミア
i VonWillebrand病
j 特発性血小板減少性紫斑病
k 消化管出血
l 子宮筋腫
m 妊娠
(ポイント)
血小板数の著しい低下が、目立った異常所見です。
紫斑も見られています。
Hbのデータが不明ですが、貧血もあるかも知れません(易疲労感のため)。
一方で、PT・APTTは正常です。
骨髄に異形細胞はないために、造血器悪性腫瘍は否定的です。
(正答) j
(選択肢)
a 悪性貧血:大球性正色素性貧血となります。汎血球減少が特徴的です。
b 鉄欠乏性貧血:小球性低色素性貧血となります。血清鉄の低下、TIBC上昇がみられます。特に、フェリチンの低下は重要所見です。血小板数は正常です。
c 再生不良性貧血:汎血球減少が特徴的です。
d 自己免疫性溶血性貧血:これのみでは、血小板数の低下はきたしません。
e 白血病:骨髄に異形細胞がみられます。
f 血友病:APTTが延長します。血小板数は正常です。
g 遺伝性球状赤血球症:遺伝性に赤血球が球状化しており、脾臓で破壊されて溶血をきたします。血小板数は正常です。
h サラセミア:ヘモグロビンを構成するグロビン遺伝子の異常により貧血をきたします(脾臓での赤血球の破壊)。血小板数は正常です。
i von Willebrand病:APTTと出血時間が延長します(PTは正常)。血小板数は正常です。
j 特発性血小板減少性紫斑病:血小板数の低下が特徴的です。
k 消化管出血:血小板数は正常です。
l 子宮筋腫:鉄欠乏性貧血の原因疾患の一つです。血小板数は正常です。
m 妊娠:通常、血小板数は正常です。
(解説)
特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:ITP)
・ 血小板に対する自己抗体が産生され,血小板の破壊(脾で)が亢進し,血小板寿命は短縮し出血傾向をきたします.
・ 小児科領域では、先行感染を伴った急性型が多いのに対して(しばしば自然治癒します)、内科領域では、先行感染のない慢性型が多いです(女性に多いです)。
【症状】点状出血。粘膜出血。
【検査&診断】
・ PT&APTTは正常。
・ 血小板数の低下。
・ 他血液疾患の除外(除外診断)。特に,MDSは確実に否定。
・ 骨髄巨核球の増加(末梢での血小板破壊に対する反応)。
【治療】必ずしも早期診断&治療が当てはまりません。
1) 血小板数が数万以上ある症例では無治療で経過観察する。
2) 血小板数が2-3万以下で出血があれば、副腎皮質ステロイドがfirst choice。
3) 無効例では,摘脾術を考慮。摘脾術に際しては、免疫グロブリン大量療法。
4) 近年のfirst choice:ピロリ菌の除菌療法。
5) 血小板輸血は,できるだけ避けたいが、緊急治療。
6) 新薬:トロンボポエチン受容体作動薬(エルトロンボパグ、ロミプロスチム)
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