血友病Aと血液凝固因子
CBTの再現と解説です。試験を受けた学生さんの記憶による再生のため、正確ではない部分があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
血友病Aの治療で用いられるのはどれか.
a 第V因子
b 第VII因子
c 第VIII因子
d 第IX因子
e 第X因子
(ポイント)
血友病Aは、先天性に第VIII因子が欠乏した出血性疾患です。
止血治療は、欠乏した第VIIIを補充します。
具体的には、第VIII因子濃縮製剤(第VIII因子製剤)を使用します。
(選択肢)
a 第V因子は、第X因子の補酵素的な役割を果たします。
b 第VII因子は、外因系凝固活性化機序の最初のステップで役割を果たします。
ビタミンK依存性凝固因子(半減期の短い順に、第VII、IX、X、II因子)のなかで、最も半減期が短いために、ビタミンK欠乏症では、最初に低下します。
そのために、ビタミンK欠乏症では、APTTよりもPTの延長の方がはるかに目立ちやすいです。
c 第VIII因子は、第IX因子の補酵素的な役割を果たします。第VIII因子が先天性に欠損した疾患が、血友病Aです。
d 第IX因子が先天性に欠損した疾患が、血友病Bです。
e 第X因子が低下しますと、PTもAPTTも延長します。
(正答) c
(解説)
<血友病治療の問題点>
1. インヒビターの発生:血友病の輸注療法中に出現する同種抗体です。この出現で,輸注療法の効果が極端に減弱します。抗体の力価はベセスダ単位で表現されます。
(対処法)バイパス製剤(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤、活性型プロトロンビン複合体製剤など)による止血を行います。
2. 歴史的には、HIVやHCV感染症が問題になりました。現在の製剤は安全ですが、過去には薬害エイズと呼ばれた悲しい過去があったことは忘れないようにしたいです。
(参考)
・ 先天性血友病A患者にとっては、第VIII因子は未知の蛋白であるため、第VIII因子製剤による治療に伴ってインヒビター「同種抗体」が出現することがあります。
・ これとは別に、血友病Aではなくて第VIII 因子に対するインヒビターが後天性に出現する疾患が知られている。後天性血友病A(国試既出)と言います。この場合のインヒビターは「自己抗体」です。先天性血友病では間接内出血が多いですが、後天性血友病では何故か間接内出血はほとんどなく、筋肉内出血や皮下出血がみられます。
<リンク>
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26| 医師国家試験・専門医試験対策