2017年01月01日
伝統と文化のまちづくり(4)歴史・伝統の保存 1
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会:平成28年7月17日(日)東急ホテル
伝統と文化のまちづくり: 山出保前金沢市長(インデックス)
特別講演
「伝統と文化のまちづくり」(4)歴史・伝統の保存 1
石川県中小企業団体中央会会長、前金沢市長
山出 保
<金沢城公園の整備(国史跡)>
お城の方は、保存すべき区域の中にあるわけで、ここは長屋であるとか、櫓であるとか、あるいは門であるとか、こういうものを残して、お庭も新たに手入れしたわけです。
これで復元整備は大体終わりに近いと思っています。
お城は県が取得して県が整備をしている。
大学のあった所です。
市は何をしたかと言ったら、附属小中学校のあった所を市が買って、そして美術館をつくったということでして、そこで、県と市で持ち分を決めたのです。
お城の整備は終末に近くなっていると思っています。
残っているのは、尾山神社の裏側から橋をかけて、お城の中に入れるのです。
その橋をかける仕事が残っています。
尾山神社の裏側に橋をかける、これ「鼠多(ねずみた)門橋」というのですが、この仕事が残っています。
<重要伝統的建造物群保存地区の選定>
さて、市は何をしていたかと言いますとこんなことをしました。
文化財を残すといいますのは、戦争が済んですぐ出来た「文化財保護法」という法律で文化財、古い価値ある建造物等を残していこうとしたわけです。
もともと文化財というのは単体です。
本堂とか山門とか。そういう単体の建築物とか、構造物を文化財と考えていますが、文化庁もだんだんこの範囲を広げてきまして、この写真の茶屋街は一軒一軒を文化財にしたのではないのです。
エリアとかゾーンを文化財にしました。
ここに重要伝統的建造物群と「群」という字が書いてあります。
これはエリア、ゾーンという意味です。
そういうまとまったエリア、ゾーンを文化財にするということです。
ところが、これは楽ではないのです。
お茶屋へ行きまして、「これ文化財にしようよ」と言っても、「そんなことをされたら困る」と反対されます。
なぜ困るかと言いますと、資産価値がさがるというわけです。
文化財にされたら自由に勝手に自分の財産を処理したり変更したりできなくなるから、「それは待って下さい」、それからもしもそういうことになると、観光客がたくさん来て「家が覗かれる」、こんなことで反対されたわけです。
私の2代前の岡市長は残したかったけれども、反対されてできなかったので、きっと無念だったろうなと思いました。
私が市長になりまして、この茶屋街へ何度も行ったんです。
「頼む。これは単なるあなた個人の財産でないんやから、日本の財産なんやから頼むね」と言ったわけです。
25年間かかりまして了解をとりました。
その代わり、電柱をガス灯にするとか、女性ばかりのエリアですから一番困るのは冬の雪の始末です。融雪装置を付けてあげるとか、そういうことをやって文化財になったわけであります。
そうしたら、お客さんがたくさん来まして、私は「ちょっと困るなぁ」と思っているのです。
本当にそう思っているのですが、こうやってこのエリアは残って行くことになりました。
今、お茶屋をエリアとして残してある所は、京都の祇園と、金沢のこの2つ、主計町のお茶屋とひがしのお茶屋。
日本ではこの3つだけであります。
ひがし茶屋街の上にお寺があります。
このお寺も群落を成しています。
これをやっぱり残したいです。
寺町台をご覧になりますと、つば甚の前にお寺がずっと線になって並んでいます。
これも珍しいのでありまして、全国では他にありません。
そこでこういうお寺の群落を残したかったのであります。
これもそう簡単ではないのです。
住職と何度も折衝をするのであります。
私はこう言いました。
「文化財指定をうけてもらうと、国が援助をしてくれます。国庫補助金が出るのです。その補助金に県と市が連れ立って出します。そうすると、皆さんが本堂を直したり、山門を直すときには負担が少なくなりますから、ぜひ文化財指定を受けて下さい」こういう言い方をしたわけです。
時間がかかりましたけど、理解をしてもらいました。
お寺の群落を文化財指定にしたのは金沢だけで、他にはありません。
伝統と文化のまちづくり: 山出保前金沢市長(インデックス)
<リンク>
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05| その他