2017年03月08日
CBT(コアカリキュラム)/APTT延長・PT正常
CBT(コアカリキュラム)の復元問題と解説です。
40歳の男性.幽門狭窄症で胃の部分切除を受けた.出血時間に異常はないが,APTT延長,PT正常であった.異常がある凝固因子はどれか.
a II
b V
c VII
d VIII
e IX
f X
g XI
h XII
i XIII
(ポイント)
PTが正常ということは、血液凝固VII、X、V、II(プロトロンビン)、I因子(フィブリノゲン)には異常ないと考えられます。
PTが正常で、APTTのみが延長している場合には、血液凝固XII、XI、IX、VIII因子のいずれかの活性が低下していることになります。
(正解)d、e、g、h
(APTTの延長する代表的疾患・病態)
1) 血友病A:先天性の第VIII因子欠損症。
2) 血友病B:先天性の第IX因子欠損症。
3) von Willebrand病(vWD):先天性のvon Willebrand因子(vWF)欠損症。vWFは、第VIII因子のキャリアー蛋白でもあります。vWDでは、第VIII因子を産生できますが、vWFがないために第VIII因子は安定して血中に存在できません。vWDでは、血中第VIII因子活性も低下してAPTTは延長します。
4) 後天性血友病A(第VIII因子インヒビター):第VIII因子活性が低下。
5) ビタミンK欠乏症:この疾患では、ビタミンK依存性凝固因子である、凝固VII、IX、X、II因子活性が低下します。まず半減期の短い第VII因子が低下するため、PTの延長が目立地ますが、さらに進行するとAPTTの延長もみられます。
6) ループスアンチコアグラント(LA):LA陽性では、APTTが延長することがあります。LAは抗リン脂質抗体症候群の診断に不可欠な検査です。
7) 肝不全:肝不全ではほとんど全ての凝固因子産生が低下するため、PT&APTTが延長します。初期には半減期の短い第VII因子をひっかけるPTの延長が目立ちますが、進行するとAPTTの延長もみられます。
8)検体へのヘパリンの混入:いわゆるartifactです。ヘパリンロック部位からの採血、透析回路からの採血、動脈留置カテーテルからの採血などでみられることがあります。
<リンク>
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57| 医師国家試験・専門医試験対策