2018年03月21日
PT正常,APTT延長,出血時間延長(CBT)
CBTの再現問題と解説です。
PT正常,APTT延長,出血時間延長.考えられる疾患はどれか.
a 血友病
b von Willebrand病
c 特発性血小板減少性紫斑病
d 血小板無力症
e 溶血性尿毒症症候群
(解説)
PT、APTT、出血時間それぞれの検査で、延長する疾患・病態を理解の上、記憶しておく必要があります。
a 血友病A(第VIII因子の先天性欠損)、血友病B(第IX因子の先天性欠損)のいずれであっても、APTTは延長しますが、出血時間は正常です(PTも正常)。
b von Willebrand病では、von Willebrand因子(VWF)が先天性に低下して血小板粘着能が低下する(血小板機能が低下する)ために、出血時間は延長します。
VWFは第VIII因子のキャリアー蛋白でもあり、von Willebrand病では第VIII因子活性も低下します。
そのために、APTTも延長します(PTは正常)。
c 特発性血小板減少性紫斑病(近年は免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症ともいう)では、血小板数が低下するために、出血時間は延長します。PT、APTTは正常です。
d 血小板無力症は、血小板凝集能が低下する(血小板機能が低下する)先天性疾患です。
出血時間は延長しますが、PT、APTTは正常です。
e 溶血性尿毒症症候群は、血小板数が低下するために、出血時間は延長します。PT、APTTは正常です。
(正解)b
(ポイント)
<出血時間の延長する代表的疾患など>
1) 血小板数の低下:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)ほか多数。
2) 血小板機能の低下:血小板無力症、von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群、尿毒症、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)内服、抗血小板薬内服時など。
3) 血管壁の脆弱性の存在
<PTの延長する代表的疾患など>
(VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の低下で延長します)
1) ワルファリン内服中:ワルファリンはビタミンKの拮抗薬です。ビタミンK欠乏状態に伴い、VII、IX、X、IIの順番で凝固因子活性が低下します。VII因子が最も半減期が短いために、最初に低下します。そのため、ビタミンK欠乏症では、APTTよりもPTの方が先に延長します。
2) ビタミンK欠乏症:同上。
3) 肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など):凝固因子は肝臓でできルため、肝不全ではPTやAPTTが延長します。特に、半減期の短い第VII因子を反映するPTは、敏感に延長します。
4) 凝固第VII、X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
<APTTの延長する代表的疾患など>
(XII、XI、IX、VII、X、V、II、I因子の低下で延長します)
1)血友病Aまたは第VIII因子インヒビター
2)血友病Bまたは第IX因子インヒビター
3)von Willebrand病(vWD)
4)先天性第XII、XI因欠損症。または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
5)凝固第X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター(この場合は、PTも延長)。
6)ループスアンチコアグラント(LA):抗リン脂質抗体症候群の診断に必要。血栓傾向となります。
7)ヘパリン投与時。
8)ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)内服中またはビタミンK欠乏症(ただし、PTの記事も参照)
9) 肝不全 (ただし、PTの記載内容も参照)
<リンク>
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