深部静脈血栓症、プラスミノゲン活性化抑制因子1(医師国家試験)
医師国家試験の再現問題です。
深部静脈血栓症の発症リスクとなるのはどれか.2つ選べ.
a アンチトロンビン欠乏症
b 第XIII因子欠損症
c フィブリノゲン欠乏症
d プラスミノゲン活性化抑制因子1欠損症
e プロテインS欠乏症
(解説)
a アンチトロンビンは、プロテインC、プロテインSとともに、生理的な凝固阻止因子です。
b 第XIII因子は、フィブリンを架橋結合して安定化させます。第XIII因子の著明な低下は出血症状をきたします。
c フィブリノゲンは止血の最終段階で、トロンビンの作用によりフィブリンに転換します。フィブリノゲンの低下は出血傾向となります。
d プラスミノゲン活性化抑制因子1(plasminogen activator inhibitor 1:PAI-1)は、組織プラスミノゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator:t-PA)と1対1結合することで、線溶阻止的に作用します。
e 先手性プロテインS欠乏症(日本人では1/55人の発症頻度)が知られていますが、プロテインSは経口避妊薬、妊娠、炎症など後天的にも低下します。経口避妊薬の血栓傾向の理由として、プロテインSの低下があげられます。
(備考)
・血栓性素因は、先天性として、先天性アンチトロンビン・プロテインC・プロテインS欠損症など、後天性として抗リン脂質抗体症候群などがあります。
・深部静脈血栓症
1)罹患血管は深部静脈。上肢よりも下肢の方が、はるかに多いです。
2)原因:長期臥床、悪性腫瘍、先天性&後天性凝固異常など。
3)症状:片下肢の腫脹、疼痛。
4)肺塞栓:合併すると致命症になる場合があります。
5)治療:抗血栓療法。急性期はヘパリン類(未分画ヘパリンなど)、慢性期はワルファリンを使用。ただし、近年は、新規経口抗凝固薬(NOAC)(直接経口抗凝固薬(DOAC)とも言う)で、急性期〜慢性期の治療を通して行われることも多くなりました。
・プラスミノゲン活性化抑制因子1(plasminogen activator inhibitor 1:PAI-1)
1) 血管内皮からt-PAが産生されると、t-PAはプラスノゲンをプラスミンに転換します。
2) プラスミンが血栓(フィブリン)を分解すると、血栓の分解産物であるFDP(D-ダイマー)が形成されます。
3) PAI-1は、t-PA同様に血管内皮から産生され、t-PAと1:1結合することで、線溶を阻止します。
4) PAIが上昇した症例においては、線溶に抑制がかかり、血栓傾向となります。
5) 例えば敗血症に合併したDICにおいては、PAI-1が著増するために血栓が溶解されにくく、微小循環障害に起因する臓器障害をきたしやすいです。
(正解) a、e
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34| 医師国家試験・専門医試験対策