血栓、赤血球新生、鼻血(CBT)
CBTの再現問題です。
血栓ができやすいのはどれか
A. 血小板の粘着能低下
B. プラスミン活性低下
C. フィブリノゲン減少
D. 第VIII因子活性低下
E. α2プラスミンインヒビター活性低下
(解説)
血栓症になりやすい病態、出血をきたしやすい病態を、それぞれ理解しておきたいところです。
A. 血小板粘着能が低下しますと、出血しやすくなります。von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群では、血小板粘着能が低下します。
B. プラスミン活性が低下しますと、線溶能が低下します(血栓が溶解しにくくなります)。つまり、易血栓状態になります。
C. フィブリノゲン(第I因子ということもあります)が減少すると、出血しやすくなります。
D. 第VIII因子活性が低下すると、出血しやすくなります。具体的には、血友病Aやvon Willebrand病では第VIII因子活性が低下します。
E. α2プラスミンインヒビター(α2PI)活性が低下しますと、線溶能が亢進します。止血血栓まで溶解することで出血しやすくなります。線溶亢進型DICでは、α2PI活性が低下します。
(備考)
血栓の形成には3つの要因(ウィルヒョウの三要素)が存在します。
1. 血管内皮細胞障害:喫煙、高脂血症、高血圧、糖尿病などが原因で血管内皮細胞の機能が低下します。
2. 血流の状態(鬱帯):長期臥床、大動脈瘤、心房細動(心内の血液滞留:心原性脳塞栓の原因となります)など。
3. 血液性状の変化(粘稠度の増加、線溶能低下、凝固亢進状態など):脱水、感染症(線溶阻止因子であるPAIの上昇)、先天性アンチトロンビン欠損症、先天性プロテインC欠損症、先天性プロテインS欠損症など
(正解) B
赤血球の新生を促進しないのはどれか。
A. エリスロポエチン
B. 出血
C. 迷走神経刺激
D. 高地トレーニング
E. メテノロン
(解説)
A. エリスロポエチン(Erythropoietin)は、赤血球産生を促進する造血因子の一つです。腎性貧血の治療に用いられることがあります。
B. 出血後には、赤血球の新生が盛んになります。
C. 迷走神経刺激は関係ありません。
D. 高地トレーニングなど、慢性の低酸素状態になると腎臓でのエリスロポエチン産生が亢進します。
E. 蛋白同化ステロイドの酢酸メテノロンは、再生不良性貧血の治療に用いられることがあります。
(備考)
赤血球の新生に必要な因子:エリスロポエチン(腎臓で産生)、ビタミンB12、葉酸、鉄など。
(正解) C
2歳の男児。鼻血が止まりにくいことを主訴に来院した。
膝関節に腫脹を認める。
幼児期からよく皮下出血をきたしていた。
祖父に同様のエピソードがあったという。
出血時間3分(基準2〜5)、PT12秒(基準10〜15)、APTT 50秒(基準 30〜40)。
最も考えられるのはどれか。
A. von Willebrand病
B. アレルギー性紫斑病(IgA血管炎)
C. 血小板減少性紫斑病
D. 血小板無力症
E. 血友病
F. 抗リン脂質抗体症候群
G. 再生不良性貧血
H. 全身性エリテマトーデス
I. 多発性骨髄腫
J. ビタミンK欠乏症
(解説)
出血しやすくなる病態には、以下の5つがあります。
1)血小板数の低下(骨髄での産生低下、末梢での破壊や消費、血小板の分布異常)
2)血小板機能の低下
3)凝固異常
4)過線溶状態
5)血管壁の脆弱性。
まず、本症例は出血時間が正常です。
出血時間は、血小板数の低下、血小板機能の低下、血管壁の脆弱性のいずれかで延長します。
上記の1)2)は不定されます。
次に、PTは正常ですが、APTTのみが延長しています。
XII、XI、IX、VIII因子のいずれかに問題があると考えられます。
APTTが延長する出血性疾患は、血友病A(先天性の第VIII因子活性低下)、血友病B(先天性の第IX因子活性低下)、von Willebrand病(von Willebrand因子<VWF>は第VIII因子のキャリアー蛋白であり、VWFが低下すると第VIII因子も低下)が知られています。
膝関節に腫脹がみられており関節内出血が疑われます。
幼少時から皮下出血がみられ先天性の出血性疾患が疑われます。
祖父に同様のエピソードがあったため、伴性劣性遺伝を示唆しています。
以上より、血友病Aまたは血友病Bと考えられます(上記の3)に属する出血性疾患)。
なお、von Willebrand病では、出血時間もAPTTも延長します。
von Willebrand病では、出血症状も関節内出血などの深部出血ではなく、鼻出血、過多月経などの粘膜出血がみられやすいです。
(正解) E
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