金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2018年05月27日

免疫性血小板減少性紫斑病(ITP):医師国家試験

医師国家試験再現問題と解説です。

免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉について正しいものはどれか.
a 先天性疾患である.
b 骨髄の巨核球が減少する.
c 皮下出血を起こしやすい.
d 関節内出血を起こしやすい.
e 筋肉内出血を起こしやすい.


(解説)
免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉は、従来は「特発性血小板減少性紫斑病」と言われてきました。
現在は、両方の用語が使用されていますが、徐々に「免疫性血小板減少性紫斑病」の呼称の方が多くなると思います。

a ITPは後天性疾患です。
b 典型例では、骨髄の巨核球は上昇します。
c 紫斑病の名前のごとく、皮下出血は見られやすいです。点状出血も特徴的です。
d 関節内出血をきたすのは、血友病です。
e 筋肉内出血は、(先天性)血友病、後天性血友病などで見られます。
なお、(先天性)血友病では関節内出血が特徴的ですが、後天性血友病では関節内出血は稀です。



(正解) c


<免疫性血小板減少性紫斑病〈ITP〉>


【概念】
ITPは、血小板に対する自己抗体が産生され、脾での血小板の破壊が亢進し、血小板寿命は短縮し出血傾向をきたします。

小児科領域では,先行感染を伴った急性型が多いのに対して(しばしば自然治癒)、内科領域では、先行感染のない慢性型が多いです(女性に多いです)。


【症状】
点状出血、粘膜出血など。

【検査&診断】
・血小板数の低下(PT&APTTは正常)。
・他血液疾患の除外(除外診断)。特に,MDSは確実に否定。
・骨髄巨核球の増加。
・血小板結合性IgG(PAIgG)の上昇。

【治療】
必ずしも早期診断・治療が当てはまりません。
1)血小板数が数万以上では無治療で経過観察。
2)ピロリ菌の除菌療法。
3)血小板数が2-3万以下で出血があれば、副腎皮質ステロイド。
4)ステロイド無効例では,摘脾術を考慮。摘脾術に際して,免疫グロブリン大量療法を先行。
5)トロンボポエチン受容体作動薬

ITPと抗リン脂質抗体症候群(APS)の合併もあり、摘脾術時の術後血栓症に注意が必要です。


<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02| 医師国家試験・専門医試験対策