金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2018年05月27日

皮下出血と薬物:医師国家試験

医師国家試験再現問題と解説です。

68歳の女性.
左下腿の腫脹を主訴に来院した.
3日前に転倒し左下腿を打撲した.徐々に腫脹が強くなり,心配になって受診した.
脂質異常症,高血圧症,糖尿病および心房細動で内服治療中である.
現在服用中の薬剤は,スタチン,カルシウム拮抗薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,ビグアナイド薬およびワルファリンである.

左下腿後面の写真を別に示す(省略:左下腿の腫脹、皮下出血)。
 
この病変に関係しているのはどれか.
a スタチン
b ワルファリン
c ビグアナイド薬
d カルシウム拮抗薬
e アンジオテンシンII受容体拮抗薬



(解説)
画像から、皮下出血です。
筋肉内血腫も合併しているかも知れません。
深部静脈血栓症とは異なり、末梢までの腫脹はないです。
内服薬にワルファリンが含まれており、易出血状態にあったことがうかがわれます。


a スタチンは、高コレステロール血症に処方されます。
b ワルファリンは、心房細動、深部静脈血栓症、肺塞栓などに処方されます。
出血の副作用に注意が必要です。
c ビグアナイド薬は、糖尿病治療薬です。
d カルシウム拮抗薬は、高血圧治療薬です。
e アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、高血圧治療薬です。


(ポイント)
ワルファリンの適正コントロールのために、PT-INRが用いられますが、適正コントロール内であっても、打撲などにより出血をきたすことがあります。

疾患や年齢によっても多少異なりますが、PT-INR 2〜3くらいでコントロールすることが多いです。

ワルファリンは、ビタミンKの拮抗薬であり、4つのビタミンK依存性凝固因子(半減期の短い順番に、VII、IX、X、II)を低下させます。

なお、プロテインC、プロテインSもビタミンK依存性蛋白です(国試既出)。



(正解)
 b


<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

金沢大学血液内科・呼吸器内科HP

金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ

研修医・入局者募集

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31| 医師国家試験・専門医試験対策