金沢大学・血液内科・呼吸器内科
※記事カテゴリからは過去の全記事をご覧いただけます。
<< 前のエントリトップページ次のエントリ >>
2008年12月18日

血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)

血栓症(thrombosis)は、大きく動脈血栓症と静脈血栓症に分類されます。このうち、特に静脈血栓症に関しては、血栓性素因のチェックが重要になります。

なお、血栓症の分類や抗血栓療法につきましては、以下の記事がご参考になるのではないかと思います。

血栓症の分類と抗血栓療法の分類
抗血小板療法 vs, 抗凝固療法(表)
NETセミナー血栓症と抗血栓療法のモニタリング

さて、この中でも、血液内科的な血栓性素因にはどのようなものがあるでしょうか?
換言しますと、血栓性素因はないでしょうかというコンサルトを血液内科にいただいた場合に、どのような血液検査をすれば良いでしょうか。

金沢大学 血液内科・呼吸器内科の血栓止血外来にご紹介いただいた場合には、以下の疾患についてのチェックを行っています。


1.先天性凝固阻止因子欠乏症(参考NETセミナー:先天性血栓性素因の診断
・アンチトロンビン欠乏症
・プロテインC欠乏症
・プロテインS欠乏症

2.線溶異常症

・プラスミノゲン異常症
・高Lp(a)血症:Lp(a)は線溶因子プラスミノゲンと類似構造を有し、拮抗的に作用する。

3.後天性血栓性素因

・抗リン脂質抗体症候群:抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント
・高ホモシステイン血症


<血栓性素因の血液検査として行うべき特殊検査>

アンチトロンビン(AT)、プロテインC(PC)、プロテインS(PS)、Lp(a)、ホモシステイン、プラスミノゲン、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン-β2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラント、総PAI、第XII因子

<血栓性素因の血液検査として行うべきルーチン検査>
PT、APTT、フィブリノゲン、FDP(Dダイマー)、TAT(SF、F1+2)、PIC

症例によっては、上記全て必要ではないこともありますので、適宜割愛しています。上記はMAXのオーダーということになります。

なお、上記の検査の結果として血栓性素因の原因が究明される場合に(もちろん究明されないこともあります)、最も多い原因は、少なくとも金沢大学では抗リン脂質抗体症候群(antiphopholipid syndrome:APS)です。抗リン脂質抗体症候群の発症頻度は極めて高いです。

診断のついていない、いわゆる隠れ抗リン脂質抗体症候群の患者様が多数おられるのではないかと推測しています。ひょっとしたら、将来は健康診断項目にリン脂質抗体がはいるのではないかと思っている位です。

 

 

関連記事
血液凝固検査入門:インデックスページ   ←  クリック(全記事、分かり易く図解



(以下でリンクしています)

金沢大学 血液内科・呼吸器内科HPへ

血液・呼吸器内科のお役立ち情報

血栓性疾患のカテゴリーへ

抗凝固療法のカテゴリへ

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:32| 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)

◆この記事へのトラックバックURL:

http://control.bgstation.jp/util/tb.php?us_no=426&bl_id=391&et_id=26049

◆この記事へのコメント:

※必須