トロンボモジュリン(TM)分布と血中濃度:血液凝固検査入門(6)
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前回の記事でも書かせていただいたように、トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)は血管内皮の抗血栓作用の上で極めて重要な位置を占めています。
トロンボモジュリンは全身臓器の血管に分布していますが、実はある臓器では分布に乏しいことが知られています。「その臓器」は、人間の体の中で最も血栓症の多い臓器としても知られています。血栓止血学的な考察としましては、その臓器ではトロンボモジュリンの分布が乏しいために血栓症が多いのではないかと指摘されています。
たとえば、80歳以上になると全員その臓器には血栓症があるかも知れません。
さて、トロンボモジュリンの分布が乏しい臓器 = 人間の体の中で最も血栓症の多い臓器、とはどこでしょうか?
その臓器とは、脳(brain)です。脳はトロンボモジュリンの分布が乏しい臓器なのです。このことは、脳出血に対しては阻止的に作用するのかも知れませんが、脳梗塞を発症しやすくしているものと考えられます。何らかの方法で、脳でのトロンボモジュリンの発現をアップさせる方法はないものでしょうか。そうすれば、この世から脳梗塞は激減するかも知ないと、管理人はいつも思っています(参考記事:遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(リコモジュリン))。
トロンボモジュリン(TM)は、凝固関連検査の観点から、もう一つ大きな意義を持っています。
血管内皮がダメージを受けますと、TMは容易に循環血中に遊離してしまいます。現在、血中TM濃度を保険診療内で測定することが可能です。血中TM濃度の高値は、血管内皮障害を反映しています。
例えば、血管炎を合併した膠原病や、ARDSなどで血中TMが増加することが知られています。
ただし注意が必要です。TMは腎代謝されますので、腎機能障害がありますと血管内皮障害の有無とは関係なく血中TMは上昇しますので評価できなくなります。
(続く)
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