血管内皮の抗血栓性物質と線溶:血液凝固検査入門(9)
プロスタサイクリン(PGI2)&一酸化窒素(NO):血液凝固検査入門(8)から続く。
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今までに記事にさせていただいたように、血管内皮からは抗血栓性の素晴らしい成分が多数産生されたり、存在したりしています。
しかし、この血栓阻止のための成分は、完璧の言う訳ではないようで、人間は血栓症を発症してしまうことがあります。
血栓の形成さえる部位によって、脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓など、多くの(無数の)血栓性疾患が知られています。
さて、そのできてしまった血栓を溶解しようという働きが、線溶(fibrinolyssis)です。
以前の記事でも書かせていただいたように、血管内皮に存在する抗血栓性物質はほとんど全てお薬になっています。具体的には以下のようなお薬です。
1) 抗血小板薬:PGI2誘導体(プロサイリン、ドルナー:閉塞性動脈硬化症の治療薬)、NO関連製剤(ニトログロセリン、バイアグラなど:ただし抗血小板薬としての位置つけにはなっていません)
2) 抗凝固薬:トロンボモジュリン製剤(リコモジュリン)、活性化プロテインC製剤(アナクトC:先天性プロテインC欠損症治療薬です)、アンチトロンビン製剤(アンスロビンP、ノイアート、ノンスロン)、TFPI(世界的には敗血症に対して治験が行われた経緯があります:Abstract)、ヘパリン類(ヘパリン、フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
3) 線溶薬:組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA:クリアクターなど):これは次回の記事に続きます。
・ PIC
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・ PT(PT-INR)とは?
・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
・ APTT
・クロスミキシング試験
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・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:30 | 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)
プロスタサイクリン(PGI2)&一酸化窒素(NO):血液凝固検査入門(8)
アンチトロンビン(ATIII):血液凝固検査入門(7)から続く。
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血管内皮からは、PGI2(プロスタサイクリン)が産生されます。
PGI2は、血小板機能抑制作用および血管拡張作用を有しています。このどちらの作用によっても、抗血栓的に作用することになります。
PGI2は、血中半減期が短いためにこのままお薬にすることはできませんでしたが、PGI2誘導体(ベラプロストナトリウム:商品名は、プロサイリン、ドルナー)は半減期が長くなっており、現在お薬として使用されています。
PGI2誘導体であるプロサイリン、ドルナーは、抗血小板作用のみならず血管拡張作用があるために、閉塞性動脈硬化症の治療薬として頻用されています(プレタールも抗血小板作用のみならず血管拡張作用があり閉塞性動脈硬化症の治療に用いられています)。
一酸化窒素(nitric oxide:NO)も、PGI2と類似の作用を有しています。すなわち、血小板機能抑制作用および血管拡張作用を有しています。
このように、血管内皮には、トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)、アンチトロンビン(antithrombin:AT)、外因系経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)、PGI2、NOなどの抗血栓性物質が存在するのですが、どうもこのバリア機序はそんなに強力ではないようで、しばしば血栓症を発症してしまいます。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:28 | 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)
アンチトロンビン(ATIII):血液凝固検査入門(7)
トロンボモジュリン(TM)分布と血中濃度:血液凝固検査入門(6)から続く。
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血栓症の治療薬としてヘパリンがあります。
ヘパリンは、深部静脈血栓症、肺塞栓、心筋梗塞、播種性血管内凝固症候群(DIC)などの多くの血栓性疾患の治療薬として用いられています。
さて、血管内皮には、ヘパリン様物質が存在します。このヘパリン様物質には、アンチトロンビン(antithrombin:AT)や、組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)が結合しています。ですから、血管内皮は、ATやTFPIによって、血栓ができないように、がっちりと保護されていることになります。
ATは肝臓で産生されて血中に放出された後に、血管内皮のヘパリン様物質に結合することになります。一方、TFPIは血管相皮で産生された後に、ヘパリン様物質に結合することになります。
なお、ATは流血中にも存在しますし、上記のように血管内皮上にも存在しています。
さて、流血中のATと、血管内皮に結合したATとでは、どちらが重要な意義を有しているのでしょうか。もちろんどちらも重要だと思いますが、おそらく血管内皮に結合したATの方が重要な役割を果たしているのではないかと思います。
なぜなら、ATはヘパリン(様物質)に結合することによって、活性が飛躍的にアップするからです。
血液凝固検査として、AT活性の測定が行われていますが、もちろんこの測定意義は大きいと思いますが、本当は血管内皮に結合しているAT量を評価する簡便な方法があればなお良いのではないと思っているところです。
(捕捉)
なお、アンチトロンビン(AT)は、以前はアンチトロンビンIII(ATIII)と言われていました。昔は、アンチトロンビンI、II、III。。。。とあったのですが、III以外は全て淘汰されまいました。ですから、敢えてIIIをつける必要がないということで、現在は単にアンチトロンビン(AT)という言い方が主流になっています。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:27 | 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)