金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年09月08日

血液型O型の人は、vWF活性が低い。

鼻血

 

フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:vWF)というのは、止血に必要な因子の一つです。血小板が、破綻した血管に粘着する際に、vWFが必要となります。

フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand disease:vWD)という先天性出血性素因が知られていますが、vWFが先天性に低下しているために、鼻出血などの粘膜出血をきたしやすくなります。最も多いType Iは、常染色体優性遺伝します。同じく先天性出血性素因である血友病は伴性劣性遺伝ですので男性にしか発症しませんが、vWDは、男女ともに発症します。

医学部学生さんもご覧になっていると思いますので、念のため書かせていただきますと、vWDでは、出血時間延長、APTT延長の所見が見られます(国試、卒試のヤマ中のヤマです。内科認定医・専門医試験でも問われやすいと思います)。

また、vWFは凝固第VIII因子のキャリア蛋白でもありますので、vWDでは、第VIII因子活性も低下しています(vWFが存在しませんと、第VIII因子は安定して血中に存在できません)。



さて大変興味あることに、健常人においても血液型O型の人ではvWFが低下していることが知られています。

なぜ血液型O型の人では、vWF活性が低下するのでしょうか?

最近の医学論文によりますと、O型の人間のvWFは、クリアランスが速いようです。また、O型の人のvWFは、vWF分解酵素(別名:「ADAMTS13」とも言います)による分解を受けやすいという報告があるようです。
1)Bloodの論文

2)Thromb Jの論文


それでは、vWF活性の低いO型の人は、出血しやすいのでしょうか?
そういうことはありません。vWFは元々たっぷりありますので、多少低下した程度では出血をきたすことはありません。


なお、イラストは、厚生労働省HP内の重篤副作用疾患別対応マニュアルより引用しました。

 

 

【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:53| 出血性疾患 | コメント(0)

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