【金沢大学統合卒業試験過去問題】兼:国家試験対策・専門医試験対策
金沢大学統合卒業試験過去問題(2005年)
(設 問)
67歳女性。約10年間の糖尿病治療歴がある。5日前より頻尿と排尿時痛を自覚。昨日より39℃を超える発熱、食欲低下、口渇がみられるようになり来院した。意識清明。血圧126/82。肋骨脊柱角に叩打痛を認める。血液学的検査:白血球 14,200、赤血球 386万、Hb 12.2g/dl、血小板 2.5万、クレアチニン 1.4mg/dl、LDH 274単位(基準176〜353)、PT 13.8秒(基準10〜14)FDP 41μg/ml(基準10以下)。なお、血液培養にて大腸菌が検出された。
適切な治療薬はどれか。 予測正答率 80%
( )a 利尿薬
( )b ビタミンK
( )c ヘパリン類
( )d 新鮮凍結血漿
( )e 副腎皮質ステロイド薬
(ポイント)
1) 本症例は、膀胱炎から急性腎盂腎炎を発症した症例で、血液培養の結果より菌血症をきたしている。
2) 血液検査のうち、血小板数、FDPの成績から、播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併していると考えられる。
3) Hb、クレアチニン、LDHより、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)は否定的。
4) PTが延長していないことより、ビタミンKの欠乏もない。
5) DICに対してヘパリン類の投与が適切である。
6) なお、脱水状態にあると考えられることから利尿剤は不適当である。また循環不全はなく、糖尿病があることから副腎皮質ステロイド薬は不要である。
(内科専門医試験対策)
DICの基礎疾患は熟知している必要がある。基礎疾患を有する症例に遭遇したら、DICの合併の可能性を考えて検査を行うところが、診断の第一歩となる。以下が、代表的なDICの基礎疾患である。
敗血症、急性白血病、固形癌、産科合併症(常位胎盤早期剥離,羊水塞栓)、外傷、熱傷、膠原病(血管炎合併)、ショック、大動脈瘤、劇症肝炎、肝硬変、急性膵炎など。
特に、敗血症、急性白血病、固形癌は、DICの三大基礎疾患である。
(血液専門医試験対策)
DICの病型分類、分子マーカー(TAT、PIC、PAI、Dダイマーなど)の変動について、最小限の知識は必要である。
治療に関しても、アンチトロンビン濃縮製剤、ヘパリン類の種類は知っている必要がある。抗線溶療法は原則禁忌である。
詳しくは、ホームページのNETセミナー(DIC病態・診断、DIC治療)へ。
(答)C
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 20:18| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)