金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年10月18日

【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策

金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)





(設 問)(一部改変)
血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか。
a.    肺塞栓症例の再発予防としては、アスピリンによる抗血小板療法が有効である。
b.    偽性血小板減少症に対しては、副腎皮質ステロイドの投与が半数例で有効である。
c.    単純性紫斑病の若年女性に対しては、ビタミンCの投与が半数例で有効である。
d.    閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては、ビタミンKの内服が有効である。
e.    インヒビターを有する血友病A症例の出血に対しては、活性型第VII因子製剤が有効である。


(ポイント)
a.    深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)の発症(再発)予防目的としては、ワルファリンによる抗凝固療法が有効である。
b.    偽性血小板減少症とは、EDTA採血管内で、血小板の凝集が起きるために、血小板数が実際よりも少なくカウントされてしまうartifactである(血算は通常EDTA採血管を使用)。自動血球計算機で血小板数を測定する際に、凝集した血小板は大きな固まりとなってしまうために自動血球計算機では血小板と認識されないのである。もちろん、偽性血小板減少症は治療の必要はない。なお、クエン酸ナトリウム採血管またはヘパリン採血管で採血することでこのartifactの現象は消失することが多い。
c.    単純性紫斑病は、若年女性でみられやすい。全ての血栓止血関連検査は正常である。放置して支障ない。参考:老人性紫斑
d.    閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対して、ビタミンKの内服を行っても吸収されないため無効である。ビタミンKを点滴で、経静脈的に投与する必要がある。ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため、吸収されるためには胆汁が必要である。
e.    インヒビターを有する血友病A症例の出血に対してはバイパス製剤を投与する。近年、活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)の使用頻度が増加している。


(医師国家試験対策)
ビタミンK欠乏症になりやすいTrias
1) 食事摂取量の減少:ビタミンKの摂取も低下するため。
2) 抗生剤投与:ビタミンKは腸内細菌から産生されているが、抗生剤投与により腸内細菌が死滅する。
3) 閉塞性黄疸:胆汁が出なくなるために、脂溶性ビタミンであるビタミンKが吸収されなくなる。

ビタミンK依存性凝固因子:VII、IX、X、II
その他のビタミンK依存性蛋白:プロテインC、プロテインS、オステオカルシンなど。


(内科専門医試験対策)
アスピリンとワルファリンの使い分けは理解している必要がある。

抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法

抗血小板療法 vs. 抗凝固療法


(血液専門医試験対策)
インヒビターを発症した血友病A症例の診断、治療は出題されやすい。
後天性血友病も頻出である。
クロスミキシング試験を解釈できる必要がある(参考記事 ← クリック)。

 

(答)e

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:03| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)

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