金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年10月18日

【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策


金沢大学血液内科進級試験過去問題(2006年)







(設 問)
患者:23歳女性。
抜歯後の止血困難の精査目的に来院した。血液検査は下記の通りであった。Hb 9.6 g/dL,血小板数 22.9万/μL,出血時間13分,PT11.0秒,APTT 71.2秒,フィブリノゲン 238 mg/dL,FDP 3.5 μg/mL.妹は、幼少時から頻回に鼻出血がみられる。この患者にたいする止血治療として正しいのは下記のうちどれか。

a. 第IX因子の投与
b. 第XIII因子の投与 
c. 第VIII因子の投与
d. フィブリノゲンの投与
e. デスモプレシン(DDAVP)の投与


(ポイント)
設問本文は、2005年での出題内容(1つ前の記事)と全く同じである。ただし、選択肢は全て差し替えられており、2005年は検査に関連した選択肢、2006年は治療に関する選択肢である。この設問での診断は、1つ前の記事での記載の通り、von Willbrand病である。

a.    第IX因子濃縮製剤が投与されるのは、血友病Bである。
b.    第XIII因子濃縮製剤が投与されるのは、先天性第XIII因子欠損症、術後の縫合不全や瘻孔、シェーンライン・へノッホ紫斑病における腹部症状,関節症状に対してである。
c.    第VIII因子濃縮製剤が投与されるのは、血友病Aである。
d.    フィブリノゲン製剤は、現在ほとんど使用されない。現在、フィブリノゲンを補充したい場合には新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)が使用される。
e.    抗利尿ホルモンDDAVPは、血管内皮からvon Willbrand因子を放出させる作用があるため、von Willbrand病の止血目的に使用される【国家試験既出】。ただし、DDAVPは連用すると効果が減弱する。またコンファクトF(精製度が低いためにvon Willbrand因子も含有された血漿由来第VIII因子製剤)も、von Willbrand病の止血目的に使用される。遺伝子組換え第VIII因子製剤は、von Willbrand因子が含有されていないため、von Willbrand病に対して無効である。

(医師国家試験対策 & 内科専門医試験対策)


von Willebrand病:出血時間&APTTの延長。PTは正常。vWF&第VIII因子活性が低下する。最も多いtype Iは、常染色体優性遺伝。粘膜出血(鼻出血など)が特徴的。

治療:vWF含有の血漿由来第VIII因子濃縮製剤、DDAVP。


血友病A: APTTの延長。出血時間&PTは正常。第VIII因子活性が低下する。伴性劣性遺伝。関節内出血が特徴的。

治療:第VIII因子濃縮製剤


(血液専門医試験対策)


von Willebrand病のサブタイプによっては禁忌治療があることを理解しておく必要がある。


(答)e

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:49| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0) | トラックバック(0)

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