金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年10月31日

悪性リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫):標本1

BSL標本カンファレンス:毎週火曜 17:30〜18:00ごろ 金沢大学第三内科医局

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悪性リンパ腫:1

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2008年9月30日(火)

今回のテーマは「ホジキン病関連」でした。
提示された3症例を3回に分けてご報告します。
非ホジキンリンパ腫との鑑別が非常に難しい症例が含まれていました。みなさんよく勉強されていて、難しい質問がたくさん飛び出しました。

 

症例1 40代男性

現病歴 金沢大学血液内科受診3ヶ月前からの右頸部リンパ節腫脹で発症、B症状なし。
身体所見 右頸部に、直径5cmと4cm大のリンパ節を2個触知、他の表在リンパ節や肝・脾触知せず。
主要な検査結果 LDH 205と軽度上昇、可溶性IL-2受容体(sIL-2R、リンパ腫の腫瘍マーカー、基準値220〜530 U/mL) 997と軽度〜中等度に上昇。
CT 右頸部リンパ節腫大、PET 同部位に集積亢進。

右頸部リンパ節生検標本


◆H-E染色(核が紫、細胞質がピンクに染まる)




正常な、ろ胞構造は完全に消失している。

 

 

 

 

 

 

 

HD2
小型の細胞の中に大型の細胞が散在。

1核:Hodgkin細胞

2核以上:Reed-Sternberg細胞

弱拡では、リンパ節周囲の被膜が肥厚しており、リンパ節内にも線維の増生が見られる部位があった。

 

 

免疫染色
◆CD30:大型の異常細胞が陽性を示している

HD3

矢印で示してある茶色の細胞が陽性

細胞で、核は青〜紫色に染色されている。

 

 

 

CD30はclassical Hodgkin lymphomaの多くで陽性となるが、anaplastic large T-cell lymphomaやDiffuse large B-cell lymphomaの一部、EBV感染細胞なども陽性となる。3回終了後のQ&Aでも話題がでます。


◆CD15:CD30と同様に大型の異常細胞が陽性を示した

CD15は正常顆粒球に見られるが、classical Hodgkin lymphomaの多くが陽性となる。

◆CD20:大型の異常細胞が陽性を示した
CD20はB細胞のマーカーで、(正常なB細胞はもちろん陽性で)腫瘍ではほとんどのB細胞性リンパ腫のほか、Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphomaやclassical Hodgkin lymphomaの一部でも陽性となる。


◆CD3(T細胞のマーカー):腫瘍細胞と考えられる大型細胞は陰性で(写真では見えにくいが強拡大で薄い青紫の大型細胞が存在)、その周囲をとりかこむ小型細胞が染まっている
これを「ロゼット形成」という(ホジキン病に特徴的)

HD4


◆EBER:大型の異常細胞が陽性
ホジキンリンパ腫の半数でEBVが陽性であるとの報告があり、mixed cellular typeのホジキンリンパ腫や、小児と高齢者のホジキンリンパ腫で頻度が高い。EBVとホジキンリンパ腫の因果関係については現在も研究が続けられている。


診断 ホジキンリンパ腫(結節硬化型)、臨床病期 Ann Arbor分類のIA(リンパ節あるいはリンパ組織の1箇所のみに浸潤)


 Q&A
・免疫染色は細胞のうちどの部分がそまるのか?
>>種類によって細胞質内、細胞膜、核内など染色パターンは様々
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:50| 血液内科(標本) | コメント(0) | トラックバック(0)

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