播種性血管内凝固症候群(DIC):発症機序(図解5)
DICの発症機序は、基礎疾患によって異なります。
今回は、DICの代表的基礎疾患である、急性白血病、固形癌、敗血症について紹介させていただきます。
1) 急性白血病、固形癌:
これらの疾患では、腫瘍細胞中の組織因子(tissue factor:TF)が重要な働きを演じています。TFによって、外因系凝固機序が活性化されて、凝固阻止因子による制御を上回りますとDICを発症します。後述する敗血症の場合よりも比較的シンプルな発症機序であると言えます(急性白血病、固形癌ではDIC発症に血管内皮の関与はほとんどありません)。
急性白血病に対して化学療法を行いますと、腫瘍細胞の破壊により血中に大量のTFが放出されます。急性白血病では化学療法とともにDICが一時的にかえって悪化する現象をよく経験するところです。しかし、このことを理由に化学療法を躊躇することがあってはいけません。一時的に悪化するDICを乗り切る必要があります(関連記事1:造血期悪性腫瘍に合併したDICの治療)(関連記事2:造血器悪性腫瘍に合併したDICの病態)。
2) 敗血症:
この場合のDIC発症機序はやや複雑です。敗血症においては、Lipopolysaccharide(LPS)や炎症性サイトカインがフル稼働状態です。このLPSやサイトカインは、単球/マクロファージ、血管内皮からのTF産生を亢進させることで、凝固活性化を惹起します。また、LPSやサイトカインは血管内皮に存在している抗凝固性物質トロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)の発現を抑制しますので、凝固活性化にさらに拍車をかけることになります(血管内皮とトロンボモジュリン)。
加えて、LPSやサイトカインは線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター(plasminogen activator inhibitor:PAI)の発現を著しく亢進させますので、多発した微小血栓は溶解されにくく、微小循環障害に起因する臓器障害をきたしやすくなります(敗血症に合併したDICの発症機序:関連記事)。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:11| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)