2008年11月04日
播種性血管内凝固症候群(DIC):出血症状の理由(図解8)
DICの臨床症状は2つのみです。すなわち、出血症状と臓器症状です。このどちらも致命症になることがある重要な症状です。
DICでの種々の検査所見の中でも、血小板数の低下は最初に気がつきやすい臨床検査の一つです。ですから、「DICは血小板数が低下して出血する病気である」という印象を持っている方が多いのではないかと思います。果たして、それで良いのでしょうか?
DICで出血症状がみられる理由は、以下の2つです。
1) 消費性凝固障害:血小板数や凝固因子の低下
2) 線溶活性化:止血血栓の溶解
上記のどちらも重要なのですが、管理人らは2)の方がより重要な要素と考えています。確かに、血小板数が低下したり、凝固因子が低下する(血液検査ではPTやAPTTの延長、フィブリノゲンの低下)ことは出血症状を出現させる要素の一つになっていると思います。
しかし、例えば同じ血小板数が3万/μLの場合であっても、線溶活性化がどの程度であるかによって出血症状の程度は大きく変わってきます。
血小板数が3万/μLで、かつ線溶活性化が高度な場合は著しい出血症状がみられます。しかし、同じく血小板数が3万/μLであっても線溶活性化が軽度であれば、意外と出血症状はみられないのです。
DICではないですが、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の患者様で、血小板数3万/μLだけれども無治療で外来通院している方が多々いらっしゃいます。血小板数3万/μLあれば(線溶活性化がなければ)、全くと言って良いくらい出血しないからなのです。
逆に、血小板数が5万/μLあっても、線溶活性化が高度であれば、脳出血をおこしてしまうこともあります。
DICの患者様が出血を起こしやすいかどうかを判断するためにも、また適切な治療法の選択のためにも線溶活性化の評価はとても重要と考えられます。
なお、DICの図解シリーズの今までの記事は、右の記事カテゴリーの
「播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)」← クリック(1)
から、ご覧いただけます。
DIC関連記事 (病態・診断・治療) ← クリック(2)
・NETセミナー:DICの病態・診断 ← クリック(3)
・NETセミナー:DICの治療 ← クリック(4)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:39| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)