金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年12月06日

悪性リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫):標本3

 BSL標本カンファレンス(金沢大学第三内科)


(関連記事)

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悪性リンパ腫:2

悪性リンパ腫:3

 

2008年9月30日(火)「ホジキン病関連」その3


症例3 60代女性

現病歴 5ヶ月前から皮疹が出現、3ヶ月前から発熱と全身リンパ節腫脹を自覚。
身体所見 体幹に点状紅斑、両側頸部、腋窩、鼠径のリンパ節腫脹、左下肢のpitting edemaを認める
主要な検査結果 汎血球減少、LDH 360、sIL-2R 7760、PETにて全身リンパ節・骨髄に集積亢進を認める。


左鼠径部リンパ節の生検標本
◆H-E染色:
3−1

弱拡大では正常なリンパ節の基本構造が認められない。

強拡大では大型ホジキン様細胞、RS様細胞も存在。

それ以外の細胞の多くも核小体がはっきりし、細胞質がやや淡明な細胞である点が前2例と異なる。

前2例は小型細胞が多かったため、核がより密集しているように見受けられた。







◆CD30:中型〜大型細胞のほとんどが陽性
3−2

前2例と比べ、陽性細胞(茶色)がびまん性に存在しているところが相違点かもしれない。






 
◆CD15:陰性
 

◆CD20、79α、EBER:大型の細胞が陽性
3−3+
写真はCD20。

大型細胞は陽性(→)

周囲に散在する小型で異形成のないCD20陽性細胞(▲)は、正常Bリンパ球と考えられる。

 



ここまでは症例1、2と大きな違いがない

 


◆CD3:中型〜大型の異型細胞細胞が強陽性
3−4
前2症例では異型細胞周囲の小型細胞が陽性であったが、本症例は核小体のはっきりしたやや大きめで異型のある細胞が陽性。







 
◆CD4:写真上ほとんどの細胞が陽性
3−5

 

 

 

 

 

◆CD8:染まっている細胞はまばら3−6に存在
 

 

 

 

 

CD4陽性細胞>>CD8陽性細胞であり、CD4が優位の結果であった。
骨髄穿刺・生検、皮疹の生検もほぼ同様の結果であった。

前2症例同様ホジキン様細胞が見られ、病理標本上ホジキンリンパ腫が鑑別にあがる症例。

本症例ではリンパ節生検で成熟異型リンパ球の増殖がみられ(CD4優位)、下記に示すようなろ胞樹状細胞(FDC: follicular dendritic cell)の増生を伴い、骨髄・皮膚浸潤があることなどからT細胞性非ホジキンリンパ腫と診断された。


診断 

T細胞性非ホジキンリンパ腫、臨床病期 IVB(皮膚・骨髄浸潤)、IPIはhigh intermediate
サブタイプ Angioimmunoblastic T-cell lymphoma, associated with reactive Hodgikinoid B-cells

 

本疾患に特徴的なCD21、CD35(FDCが特異的に染まる)を施行した
◆CD21+35:腫瘍細胞の背景に強く染まる細胞集団が存在
3−7









このリンパ腫では時にEBV陽性細胞が散見されるが、免疫低下状態による二次感染と考えられている。
本症例でもホジキン様の大型細胞はCD30+、CD20+、79α+、EBER+であり、EBVの感染に起因する大型B細胞の増殖と考えられた。

Hodgkin like cell、RS like cellが出現しうるホジキンリンパ腫以外のリンパ腫
・ALCL:Anaplastic large cell lymphoma
・AILT:Angioimmunoblastic T-cell lymphoma
・ATLL:Adult T-cell leukaemia/lymphoma
・PTCL:Peripheral T-cell lymphoma
・Primary cutaneous CD30-positive T-cell lymphoproliferative dislrders
-Primary cutaneous ALCL
-Lymphomatoid papulosis
・Diffuse large B-cell lymphoma anaplastic variant
・Age related EBV-associated B-cell lymphoproliferative disorders(senile lymphoma)

 

Q&A
・AILTでは高ガンマグロブリン血症が見られるが、B細胞はどこにあるのでしょうか?
>>AILTのリンパ節標本では類上皮組織球や多数の好酸球、形質細胞が見られることが多い。また、AILTは骨髄浸潤を伴うことが多いが、骨髄浸潤を認めない場合でも骨髄にポリクローナルな形質細胞増多がよくみられることが知られており、高ガンマグロブリン血症の原因となっていると考えられる。

・CD30の特徴とは?
>>classical Hodgkin lymphomaの多くで陽性となる。Bリンパ球なら腫瘍でなく反応性でも陽性となる。Tリンパ球は活性化されたものが染まるが、病理的にはTリンパ球でCD30が陽性ならリンパ腫と考えてよい。本症例では、CD20、79α、EBER に陽性を示したホジキン様の大型細胞も、CD3、4に陽性を示した腫瘍細胞もCD30陽性であった。ホジキン様のCD30陽性細胞はEBVに反応したBリンパ球で、CD3、4にも陽性を示した中型〜大型CD30陽性細胞はT細胞性リンパ腫であると考えられる。

 


◆主治医から学生さんへメッセージ

同じリンパ腫でも多彩な病理組織像を示し、それによって臨床所見も予後もそれぞれ特徴があります。奥深いと思いませんか?

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:01| 血液内科(標本) | コメント(0) | トラックバック(0)

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