金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年12月21日

悪性リンパ腫(ろ胞性リンパ腫関係):標本4


BSL標本カンファレンス
:毎週火曜 17:30〜18:00ごろ 金沢大学第三内科医局


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2008年10月7日  

今回のテーマはろ胞性リンパ腫関係」でした。

今回を含めて、全部で3症例提示します

 


症例4 50代女性

現病歴 10年以上前から化学療法、放射線療法を繰り返している治療抵抗性ろ胞性リンパ腫の症例。


鼡径部リンパ節生検標本
◆H-E染色

4-1
弱拡大(左):正常なろ胞構造は残っておらず、小さなろ胞が多数みられている(後述の免疫染色の方が見やすいと思います)。
ろ胞内部の強拡大(右):小型の細胞が多くを占めており、大型の細胞が少数混在する。

小さい細胞:centrocytes
大きい細胞:centroblastsとfollicular dendritic cells


centroblastsの量でろ胞性リンパ腫はgrade1-3a, bに分類される
Grade 1: 強拡大視野でcentroblasts が0-5個
Grade 2: 6-15
Grade 3: >15
     3a: centrocytesが存在する
     3b: シート状にcentroblastsが増生し、centrocytesを認めない本症例はcentroblastsが少ないため、grade1〜2


免疫染色(陽性は茶色に染まる)
◆CD20(B細胞のマーカーで、リツキサン®の標的となる細胞):陽性
◆CD79α(同じくB細胞のマーカー):陽性
◆bcl6(B細胞性リンパ腫の中でこれが陽性になるのはろ胞性リンパ腫に特徴的):陽性
◆CD10(bcl6と同様で、ろ胞性リンパ腫に特徴的):陽性

◆CD3(T細胞のマーカー):陰性

 
↓下図左はCD79α。ろ胞を中心に陽性細胞が存在
↓下図右はCD3。ろ胞外に陽性細胞が存在しており、ろ胞内部に存在する腫瘍細胞は陰性。
4-2

 CD20、bcl-6、CD10はCD79αとほぼ同じ所見のため図は省略。
2つを比べると、ネガとポジのように陽性細胞の分布が逆転している。

 

◆bcl-2(アポトーシス抑制遺伝子で、正常なリンパ節ではろ胞外に陽性細胞が存在し、ろ胞内部は通常染まらない。しかしろ胞性リンパ腫の大部分でろ胞内部が陽性になるため、反応性ろ胞過形成とろ胞性リンパ腫の鑑別に役立つ。ただしbcl-2陰性のろ胞性リンパ腫もあり、他の低悪性度B細胞性リンパ腫も陽性となる。)
:陽性

↓bcl-2陽性細胞はろ胞を中心に存在し、上記のCD79αなどと同じような分布である。
4-3


◆診断:ろ胞性リンパ腫、grade1〜2
 

 

 

 

◆Q&A
centroblastとcentrocyteの区別がよく分からない

4-4


ただし、follicular dendritic cellとcentroblastとの区別は専門家でも難しいとのことでした。


また、区別をつける意義は?
follicular dendritic cellは正常なリンパ節にも存在する細胞である。ろ胞性リンパ腫(低悪性度リンパ腫)はcentroblastの数によってgrade分類されるが、grade 3bとなるとびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(中悪性度リンパ腫)と同じような臨床像を呈するため、治療方針や予後が大きく異なるため鑑別が必要となる。

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:03| 血液内科(標本) | コメント(0) | トラックバック(0)

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