金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2008年12月26日

日本臨床腫瘍学会専門医認定試験の対策(重点記事)


<第4回日本臨床腫瘍学会専門医認定試験を経験して >

 

試験には、8月末までに提出する書類審査(一次審査)と、11月22日から23日に行われた筆記試験と面接試験がありました。
 

用意する書類には、受け持ち症例の要約を30症例分、剖検報告書1例以上、臨床腫瘍医としての経歴や抱負の記述、論文・学会発表等の業績がありました。

私(註:この記事の投稿者です)は、8 月31日締め切りのところ、準備を始めたのが8月の上旬でしたから、完成したのは締め切りの直前でした。1ヶ月弱では、とてもきついと思います。
2ヶ月ぐらいの余裕を持って準備する必要があると思いました。



症例の要約は、自分の専門分野(血液)から20症例を、呼吸器から7症例、頭頸部から3症例を選びました。剖検報告書は1例分のみ提出しました。プロフィールの欄には、経歴、現在興味を持っていること、専門医を取得することへの意気込みについて記述しました。

用意する書類の量は多く、内容も複雑であるため、日本臨床腫瘍学会のホームページにある認定試験の申請の仕方を熟読しておく必要があります。漏れがないか何度も確認することが重要だと思います。
 
書類審査の合否は、10 月半ばに電子メールで通知されました。試験勉強は、その後から本格的に開始しました。勉強期間は約1ヶ月ですが、仕事上いろいろと制限を受けるので、正味2週間ぐらいだったかもしれません。

私が受験勉強に用いた教材は、日本臨床腫瘍学会発行の「新臨床腫瘍学−がん薬物療法専門医のために」という分厚い書籍、国立がんセンターの「がん診療レジデントマニュアル」、それと教育セミナーの教材および日本臨床腫瘍学会のホームページで聴講できる教育セミナーのビデオです。


ビデオは非常に役に立ちました。


ビデオの時間は15分から50分ぐらいです。診療の合間に適当な長さのものを選び見るようにすれば効率よく勉強することが出来ると思います。
ビデオで紹介された内容がかなり試験に出ていたのではないかと思うので、本を読むより遙かに効率がよいのではないかと思います。ビデオの復習に本を用いれば、より理解が深まり、記憶が鮮明になるように思います。


がん診療レジデントマニュアルも必須です。


新臨床腫瘍学は時間が限られている人にとっては読む時間がないためあまり役に立ちません。
教育セミナーの教材もスライドのコピーが多いので、勉強するには意味が分かりにくいものがありました。
 
筆記試験は、午前2時間と午後2時間の2回行われます。問題文は、比較的大きいフォントサイズで記載されていましたので、40 代の私の視力でも十分に耐えられるものでした。
問題数は午前午後とも80問前後で日本内科学会総合内科専門医試験に比べれば、難易度はさておき、時間的な余裕は十分にありました。

一題一題じっくり読み進めて大丈夫です。回答はマークシート方式です。
「・・・を選べ。」という問いに、いくつ選べばよいのかわからなかったのですが、表紙の注意書きを読めば1つだということがわかりました。
「・・・を2つ選べ。」と複数選ばせる問題もあり注意が必要です。
最初に表紙の注意書きをじっくり読みましょう。
 

問題は、基礎、薬理、統計、臨床試験、病理、臨床、放射線、支持療法、緩和医療、コミュニケーション・スキルなど、幅広く出題されていました。


教育セミナー(そのビデオ)とがん診療レジデントマニュアルで8割以上はカバーされるのではないかと思いますが、それにはなかった癌腫も出題されていました。


正解率7割が合否ラインなので、勉強する時間の少ない人は、最低限ビデオの内容とがん診療マニュアルの内容をしっかりやる必要があります。逆にいえばこの2つをしっかりやれば合格できると思います。 特に、臨床の問題以外ではビデオが最も少ない時間で効率よく勉強できる教材だと思います。
 

基礎では、細胞周期、シグナル伝達、血管新生などについて出題されていました。はじめが基礎から始まるため、このところを勉強していないと、試験開始早々じっとこらえる(焦って取り乱す)時間が続くことになります。内容的にはやはり教育セミナー(直近のAとB)の内容をしっかり押させていれば8割以上は取れるように思います。始まりが暗い気分にならないためにもしっかり勉強した方がよいと思います。
 
統計(臨床試験)もビデオをみて勉強しました。東大の大橋先生のセミナーは素晴らしいのですが、試験対策からは国立がんセンターの柴田先生のビデオが役に立ちました。
試験で、αエラーとβエラーの意味を問う問題がでたのですが、柴田先生のセミナーで、αエラーはあわてんぼうの“あ”がαエラー、βエラーはぼんやりのエラーの“ぼ”がβエラーと覚えると解説していたことを思い出し、解くことが出来ました。

 
薬理学もビデオを中心に勉強をしました。


神戸大学の南先生の臨床薬理のビデオは必ず見ておく必要があると思います。
 

 
倫理、臨床試験、放射線、サイコオンコロジーに関しても時間の関係上、教育セミナーのビデオだけしか勉強する時間はありませんでした。難しい問題もありましたが、セミナーの内容から多くが出題されていたと思います。
 
病理は、免疫染色で使用する抗体の診断的意味を理解しておく必要があります。
 

臨床の問題が当然のことながら最も多くを占めていました。疫学、染色体異常や遺伝子異常、病期分類ごとの標準治療、副作用、分子標的薬について出題されていました。


臨床ではビデオよりも、「がん診療レジデントマニュアル」が役に立ちました。


陰茎癌などマニュアルにない癌腫も出題されていましたが、70%の合格ラインを突破する内容は十分に含まれていると思います。分厚い「新臨床腫瘍学−がん薬物療法専門医のために」を読む時間のない人にはマニュアルをしっかりと勉強することが大切です。
ただし、 極めて新しい内容も出題されていますので、一番新しいセミナーの内容を確認することも重要だと思います。

病期分類ごとの標準療法を問う問題では、薬剤名を覚えておくことは大切ですが、投与量や投与スケジュールの細かいことを問う問題はありませんでした。ただし、パクリタキセルとドセタキセルは単剤で使用した場合の投与量が出題されていました。
 

2日目は面接試験でした。面接は20ブースほどに分かれて行われます。面接時間はあらかじめ通知されていて、30 分ほど前に集合することになっていました。面接時間は30分ほどですが、移動時間などで正味は25分ほどでした。

はじめに提出した30症例のコピーを持参するのですが、面接開始時にその中の1症例を指定されます。指定される症例は専門外のものが多いようです。

私に指定された症例は頭頸部癌(耳鼻科領域) の症例でした。5分ほどでその症例のプレゼンを行い、その後質問を受けました。質問の内容は、病期に応じた標準療法、副作用、予後などでした。また耳鼻科とはどのように診療協力をしていたかも質問されました。

症例要約はその場で見ることができるため、 要約の考察欄に上記の質問事項に対する回答はあらかじめ記載しておくことよいと思います。要約作成時にこの症例に対してどのような質問があるかを念頭に置きつつ作成 すると面接で役に立つのではないかと思いました。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:13| 専門医試験受験談 | コメント(0) | トラックバック(0)

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