金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年01月05日

播種性血管内凝固症候群(DIC):TATとPICの相関(図解31)

DIC31


前回の記事では、FDPの値と、DICの重症度が相関しない(むしろ逆説的である)と書かせていただきました。DICにおける凝固活性化の程度と線溶活性化の程度の相関をみることで、さらに深くこの逆説を理解することが可能になります。

凝固活性化の程度は、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TATで、線溶活性化の程度はプラスミン-α2プラスミンインヒビター(PICで評価することが可能です。上図は、DIC症例におけるTATとPICの相関関係をみたものです。

 まず、下段から見てみましょう。多臓器不全(multiple organ failure:MOF)を合併していないDIC症例におけるTATとPICの相関を見ています。両者の間には、正の相関関係が見られています。つまり、MOFのない症例では、凝固活性化(TAT)と線溶活性化(PIC)が並行して進行していることになります。

 それでは、上段のMOFを合併している症例ではどうでしょうか?     

 凝固活性化が進行していましても(TATが上昇しても)、線溶活性化は見られません(PICは上昇しません)(敗血症に合併したDICなど)。 DICにおいては、凝固活性化と線溶活性化が並行して進行すると考えられてきた歴史があったと思います。しかし、MOF合併のDIC症例では、凝固活性化が進行しましても、決して線溶活性化は進行しないのです。

 凝固活性化と線溶活性化のバランスは、DICにおける臓器不全などの病態と密接に関連していることが分かります。

(続く)

 

以下で、DIC関連記事とリンクしています。


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播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】(シリーズ進行中!!)

DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:21| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0) | トラックバック(0)

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