鳩尾(みぞおち)の場所:心窩部
今回は、血液内科、呼吸器内科とは直接的には関係はありませんが、「鳩尾(みぞおち)の場所」についての記事を書かせていただきます。
医学的には、みぞおちのことを、心窩部(しんかぶ)と言っています。胸骨の下で、臍(へそ)の上あたりをさします。
みぞおちに相当する部位には胃が存在します。しかし、胃の病気でなくても多くの病気でみぞおちの痛みを生じます。内科領域のみならず、いろんな病気で痛みの部位と病気の部位が異なるということは少なくありません。このブログは消化器内科のブログではありませんので、頻度の高い疾患のみ紹介させていただきます。
1) 胃潰瘍、胃炎、進行した胃癌など:よく患者様より自分は胃が痛くなることはないから胃は心配していないと言ったニュアンスのことをおっしゃることがありますが、それは間違っています。例えば、早期胃癌は通常全く症状はありません。それで定期的に健康診断で胃を検査している訳です。
2) 十ニ指腸潰瘍:十ニ指腸潰瘍はみぞおちよりやや右側に存在しますが、みぞおちの痛みとして感じることが多々あります。しばしば空腹時に痛みが強いのが特徴です。逆に食事をとりますと痛みが和らぐことがありますが、だからと言って、十ニ指腸潰瘍が良くなった訳ではなく、更に悪化しますと空腹時も食後も痛みが見られるようになります。1)2)では、病変部位から出血が見られる場合には、鉄欠乏性貧血の原因となりえます。
3) 胆石(疼痛発作時):胆嚢に結石ができる病気です。胆嚢は右季肋部(右脇腹)に存在しますが、しばしばみぞおちの痛みとして感じます。
4) 虫垂炎(一般の方が言われる、所謂「もうちょう(盲腸)」):虫垂は右下腹部にあります。通常は右下腹部の痛みを生じますが、虫垂炎の初期では、みぞおちが痛くなることがあります。2)3)4)ともに、痛みの場所と、病気の場所が違っている例になります。
ところで、みぞおちの語源は2つあるようです。
一つは、水を飲みこんだあとに達する部位という意味からの命名です。水落ち→みずおち→みぞおち という変化です。
もう一つは、みぞおちの部位が、鳩の尾のように見えるということで、みぞおちに、鳩尾という漢字を当てるというものです。肋骨の下側の線が、鳩の尾のように広がっているということに由来するそうです。管理人は、最近ハトを見た事がありませんので、恥ずかしながら鳩尾と言われてもピンとこないのが正直なところです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:36| 医学全般 | コメント(0) | トラックバック(0)