咳喘息:咳嗽の診断と治療(7)
診断フローチャート:咳嗽の診断と治療(6)からの続編です(咳嗽ガイドライン関連の記事)。
遷延性咳嗽と慢性咳嗽の中でも代表的原因疾患について、ブログ記事にさせていただきます。
【咳喘息】cough variant asthma(CVA)
概念
1979年Corraoらは、喘鳴や呼吸困難を伴わない慢性咳嗽を訴え、気道過敏性が軽度亢進し、気管支拡張薬の経口投与によって咳嗽が消失した6症例を喘息の亜型として報告しています。その後咳喘息と命名されましたが、欧米、本邦ともに頻度の多い原因疾患です
病態
以下の表に示したように、生理学的所見も病理学的所見も典型的喘息に酷似していますが、過剰な気管支平滑筋収縮が起こらず、咳嗽のみが表現型となる点が喘息とは異なります。
本疾患における咳嗽発生機序の詳細は明らかではありませんが、気管支平滑筋内の知覚神経(Aδ線維)が平滑筋の軽度収縮によって刺激されてインパルスを咳中枢へ送ることが示唆されています。
したがって、気管支平滑筋を弛緩させる気管支拡張薬が有効な咳嗽の病状を呈することになります。
診断
咳喘息の簡易診断基準を以下に示します。
咳喘息の簡易診断基準 (下記1〜2の全てを満たす)
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1. 喘鳴を伴わない咳嗽が8 週間 (3週間) 以上持続。
聴診上もwheezesを認めない。
2. 気管支拡張薬が有効
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参考所見
1) 喀痰・末梢血好酸球増多を認めることがある (特に前者は有用)
2) 気道過敏性が亢進している
喘息とは診断できない咳嗽に対して、気管支拡張薬が奏効するのは咳喘息だけであることが重要です。
治療
軽症: 気管支拡張薬のみ、又はロイコトリエン拮抗薬の併用で咳嗽が消失。
中等症: 吸入ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
重症: 経口ステロイド薬の併用で咳嗽が消失。
難治性:上記の治療でも咳嗽が消失しない場合。
重症と難治性は専門医の診療が必要です。
咳喘息の30%は数年の内に典型的喘息を発症しますが、長期吸入ステロイド療法はこれを予防する効果があります。
(続く)
【シリーズ】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
3)急性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
7)咳喘息
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
【関連記事】 好酸球性下気道疾患
2)咳喘息
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【リンク】金沢大学血液内科・呼吸器内科関連
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:16| 咳嗽ガイドライン | コメント(0) | トラックバック(0)