自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療 :溶血性貧血(6)
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断 :溶血性貧血(5)からの続きです。
【自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療】
厚生労働省研究班の治療ガイドラインを参考に治療を計画します。温式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の第一選択治療はステロイドです。貧血が軽い場合は経過観察を続けてもよいのですが、最終的には治療が必要になることが多いです。
1.温式抗体によるAIHAの治療
1) 初期治療(寛解導入療法)
推奨用法・用量は、プレドニゾロン換算で1.0 mg/kg/日(患者の状態・年齢・合併症により0.5 mg/kg/日まで適宜減量)、連日経口4週(反応性をみて2-6週に適宜調整)。
患者の約40%は治療開始4週までに血液学的寛解となります。その後1か月かけて0.5 mg/kg/日まで漸減します。
その後2週で5 mg(5 mg製剤1錠)を目安に漸減(急性型や直接クームズ試験が早期に陰性化する場合は早めてもよい)し、10-15 mg/日の初期維持量とします。
減量中に悪化した場合(治療例の約5%)は、0.5 mg/kg/日に戻します。
2) 維持療法
網赤血球低下とクームズ試験陰性化を目安に、5 mg/日まで減量します。そのまま維持するか、2-4週間隔で漸減を試みます。漸減中に悪化した場合の増量規定はないのですが、2段階前の量に戻すことが多いと思います。
3) 2次治療
ステロイド不応またはプレドニゾロン換算で15 mg/日未満に減量できない、副作用・合併症のためステロイド継続が困難、寛解・悪化を繰り返すなどの場合、ステロイド以外の治療を考慮します(ただし保険適応は認められていません)。
2次治療には、免疫抑制薬(イムラン・エンドキサンなど)や摘脾術、輸血・血漿交換などがあります。
4) 治療抵抗例・再発例への治療
これまで、悪性リンパ腫に準じた多剤併用化学療法や大量シクロホスファミド療法、免疫グロブリン製剤、ダナゾール、シクロスポリン、胸腺摘出術、ビンカアルカロイド、ヒト化抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体(アレンツツマブ)などの有用性が報告されています。
2.冷式抗体によるAIHAの治療
寒冷凝集素症・発作性寒冷ヘモグロビン尿症に明確な治療ガイドラインはありません。
軽症の場合、寒冷暴露の予防や保温など生活習慣の工夫のみで良好な日常生活がおくれることも多いです。高度の溶血には通常ステロイド治療が行われますが、十分な効果が得られることは少ないです。
悪性リンパ腫に伴う続発性の場合は、現疾患の治療による改善が期待できます。
その他、アルキル化薬、リツキシマブ療法などが試みられています。
【自己免疫性溶血性貧血(AIHA)治療のポイント】
プレドニゾロン換算で0.5 mg/kg/日以上使用する場合には、入院治療が望まれます(特に高齢者や合併症を有する例)。
ただし、十分な臨床経験のある血液専門医であれば外来治療も可能だと思います。血液内科病棟は、血液悪性腫瘍疾患・造血不全患者で大抵満床ですので。。。
当科もそのような状況でございます。
血液内科と言いますと、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など造血器悪性腫瘍のイメージが強いかも知れませんが(間違っている訳ではありませんが)、溶血性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、膠原病、血栓止血疾患のように、良性の血液疾患も多数扱っているのです。
血液内科という標榜ではなく、血液免疫内科と標榜している総合病院も多いです。
【溶血性貧血】
1)赤血球寿命
2)溶血性貧血の診断基準(厚生労働省研究班)
3)溶血性貧血の病型分類
4)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断
5)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断
6)自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療
7)発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療
8)溶血性貧血の治療(海外との比較)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:33| 溶血性貧血 | コメント(0) | トラックバック(0)