金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年04月01日

Dダイマーと血栓症:血液凝固検査入門(30)

FDP&Dダイマー(D dimer)とは:血液凝固検査入門(29)から続く。

 
血液凝固検査30
 
 


【関連記事】

<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)クリック(シリーズ進行中!)



血液凝固検査と言えば、まず何の検査をイメージするでしょうか。

20年前であれば、プロトロンビン時間(PT)活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンボテスト(TT)、ヘパプラスチンテスト(HPT)ではないでしょうか。

現在はどうでしょうか? おそらく、Dダイマー(D dimer)をまず思い浮かべる方が多いのではないかと思います。Dダイマーは、まさにブレイクした検査と言うことができます。


Dダイマーは何故ブレイクしたのでしょうか。

1)    Dダイマーは、播種性血管内凝固症候群(DIC)診断用として20数年前に登場しました。今も、DIC診断のための意義は大変大きいです。Dダイマーなしには、DIC診断はありえないと言えるでしょう。

2)    Dダイマーは深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞栓(pulmonary embolism:PE)診断においても、極めて高い陰性的中率を誇ることが報告されています。DVT診断において陰性的中率98〜99%と言う報告すらあります。陰性的中率が高いと言うのは、Dダイマーが正常であればDVTを否定できるという意味です。念のためですが、陽性的中率は高くありません(Dダイマーが高値だからと言ってDVTと言う訳ではありません)。

3)    Dダイマーは、artifactが全くでないのも強みです。血液凝固検査は、採血手技などによってartifactが出てしまうこともありますが(※:下記)、Dダイマーはそのようなこともなく、大変信頼できる検査ということができます。

4)    Dダイマーを院内検査している医療機関では、ほとんどの場合に即日に結果が出ます。



(※)血液凝固検査のartifact(有名なもの)


・採血が極めて困難な場合:試験管レベルで血液凝固がおきるために、凝固活性化マーカー(TATなど)が、artifactで高値となることがあります。

・ 検体へのヘパリン混入:中心静脈ルートからの採血、動脈留置カテーテルからの採血、透析回路からの採血などでありえます。APTT(時にPTも)がartifactで延長することがあります。

・ クエン酸ナトリウム入り採血管(凝固用採血管)に、規定の血液量ではなく少しの血液しか入らなかった場合:クエン酸ナトリウムの濃度が高くなってしまうために、artifactでAPTTやPTが延長することがあります。

・ 多血症の患者さんのクエン酸ナトリウム入り検体:遠心して得られる血漿部分にクエン酸ナトリウムの濃度が高くなってしまうために、artifactでAPTTやPTが延長することがあります。


Dダイマーは、血栓症(DVT、肺塞栓など)、DICなどの緊急性を要する疾患や病態の診断に不可欠な重要な検査です。このような緊急性を要する疾患の診療に携わっている医療機関では、必ず院内測定すべき検査です。

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(続く)

抗血栓・血小板・凝固 療法:血液凝固検査入門(31)







PT-INRは、以下の記事も御参照いただければと思います。
PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症
PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
 
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PT(PT-INR)とは?
PT(ワーファリン)&トロンボテスト
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クロスミキシング試験
Dダイマー
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:27| 凝固検査 | コメント(0)

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