金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年04月02日

抗血栓・血小板・凝固 療法:血液凝固検査入門(31)

Dダイマーと血栓症:血液凝固検査入門(30)から続く。

 
血液凝固検査31
 
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血栓症(thrombosis)は、一旦発症してしまいますと、頑張って加療しましても不可逆的な機能麻痺を残したり、最悪の場合には死に至ってしまいます。血栓症の代表的疾患である脳梗塞をイメージしていただければ納得しやすいのではないかと思います。

血栓症を発症してしまった後も当然ながら全力で加療しますが、上記のような事情から、血栓症を発症させない治療ができればより理想的です。

このような血栓症を発症させないような治療のことを、抗血栓療法と言います。ただし、この抗血栓療法もただ行えば良いという訳ではありません。ちゃんと効いているかどうかのチェック(血液凝固検査:血栓症と抗血栓療法のモニタリング)をしてあげる必要があります。詳細は、次回以降の記事にさせていただきます。




抗血栓療法の分類

1.    抗血小板療法

【代表的薬物】
アスピリン(商品名:バファリン、バイアスピリンなど)、チクロピジン(商品名:パナルジン)、クロピドグレル(商品名:プラビックス)、シロスタゾール(商品名:プレタール)、ベラプロストナトリウム(商品名:プロサイリン、ドルナーなど)

【有効な病態】
血流が速い環境下の血栓(動脈血栓)。
血流の速い環境下では、血小板が活性化しやすい血小板血栓)という有名な現象が知られています。ですから、抗血小板薬で、血小板活性化を抑制するのが有効なのです。

【有効な代表的疾患】
脳梗塞(心房細動からの脳塞栓を除く)、心筋梗塞、閉塞性動脈血栓症からの血栓症など。

【病理学的特徴】

動脈血栓(血小板血栓)は、血小板含有量が多いために、病理学的に白く見えます。白色血栓という言い方があります(白血球ではなく血小板のために白く見えます)。



2.    抗凝固療法

【代表的薬物】
内服薬は、ワルファリン(商品名:ワーファリン)のみです。
注射薬では、ヘパリン類(商品名:オルガランフラグミン、クレキサンアリクストラなど)、アルガトロバン(商品名:スロンノン、ノバスタンなど)

【有効な病態】
血流が遅い環境下の血栓(静脈血栓)。
血流の遅い環境下では、凝固が活性化しやすい凝固血栓)という有名な現象が知られています。ですから、抗凝固薬で、凝固活性化を抑制するのが有効なのです。

【有効な代表的疾患】
深部静脈血栓症、肺塞栓、心原性脳梗塞(心房細動からの脳塞栓)など。
心原性脳梗塞は、血栓で閉塞する部位は脳動脈ですが、血栓ができる理由は心房細動に伴う心内血液滞留(血流が遅い環境下における凝固血栓)です。ですから、ワルファリンによる抗凝固療法が有効です。

【病理学的特徴】
静脈血栓(凝固血栓)は、フィブリン含有量が多いですが、血流が遅いために多くの赤血球を巻き込みます。赤血球含有量が多いために、病理学的に赤く見えます。赤色血栓という言い方があります。



3. 線溶療法

 ウロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)などによる血栓を溶解する治療です。この治療を行っているということは、血栓症を発症してしまったということを意味します。できれば、この治療のお世話にならないようにしたいものです。また、線溶療法では出血の副作用を無視できません。
 
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:23| 凝固検査 | コメント(0) | トラックバック(0)

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