トランサミン(3):有効な病態と副作用(血尿時、血栓症)
【トラネキサム酸が有効な病態】
トラネキサム酸(商品名:トランサミン)は止血剤としての印象が大変強く、実際に種々の出血に対して多少なりとも効果を発揮する可能性がありますが、最も効果を発揮するのは全身性の線溶活性化が原因の出血です。
たとえば、以下のような場合です。
1) 線溶療法時の副作用としての出血
2) アミロイドーシスに線溶活性化病態を合併した場合の出血
3) 線溶亢進型DIC時の致命的な出血(ただし、使用法を間違えますと全身性血栓症を誘発して死亡例の報告もあります。このあとのシリーズ記事で紹介させていただきます)
4) プラスミノゲンアクチベータ産生腫瘍
5) 体外循環時の出血(線溶活性化病態となることが知られています)
6) 先天性α2プラスミンインヒビター欠損症における出血
7) その他
トラネキサム酸が、血友病における出血(関節内出血など)や、von Willebrand病における出血(鼻出血など)の頻度を低下させる可能性がありますが、過剰な期待を持たない方が良いと考えられます。
血友病Aであれば第VIII因子製剤、血友病Bであれば第IX因子製剤、von Willebrand病であればDDAVP(デスモプレシン)やvWFを含有した第VIII因子製剤(商品名:コンファクトF)が基本的な止血治療法となります(参考記事:止血剤の種類と疾患)。
全身性出血性素因の精査を行っても出血性素因が発見されなかった場合の種々の出血(鼻出血、紫斑など)に対しても、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(商品名:アドナ)とともにトラネキサム酸が投与される場合があります。ただし、この場合も有効性に関して過剰な期待を持たない方が良いと考えられます。
また、血尿に対してトラネキサム酸を投与すると、凝血塊が溶解されにくくなり尿路結石の原因になることがあるため注意が必要です。
さらに、血栓症の致命的な副作用には、くれぐれも注意が必要です(後のシリーズ記事で紹介いたしなます)。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:39| 出血性疾患