肺癌(肺がん):金沢大学 呼吸器研究室グループ紹介(3)
肺疾患(間質性肺炎):金沢大学 呼吸器研究室グループ紹介(2)から続く
今回は、金沢大学 血液内科・呼吸器内科(第三内科)呼吸器研究グループの3回目の紹介です。
呼吸器研究グループの3つのサブグループのうち、これまでに、気道疾患グループ、肺疾患グループ(間質性肺炎など)を紹介させていただいていますので、今回は肺癌グループです。
悪性腫瘍の疾患は多数ありますが、その中でも、呼吸器悪性腫瘍の一つである肺癌の克服は、人類に課せられた大きな課題の一つではないかと思います。
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<肺癌グループ>
2002年9月に臨床応用された肺癌治療薬ゲフィチニブ(イレッサ)を含む上皮成長因子受容体阻害剤(EGFR-TKI)は肺がんの個別化療法の扉を開けそうになりました。
金沢大学呼吸器内科の肺癌グループはこれらの研究に積極的に参加しています。ゲフィチニブの効果予測因子としてのEGFR遺伝子変異と遺伝子増幅を比較検討した研究では、EGFR遺伝子変異はゲフィチニブの効果予測因子ですが、遺伝子増幅は効果予測因子ではないことを明らかにしました(曽根)。
またGlobal studyにも積極的に参加し、2008年に発表され、大きな反響を呼んだWJTOG0203(化学療法後のゲフィチニブの有用性を検討する第III相試験)やIPASS(アジアにおけるゲフィチニブと細胞障害性化学療法の有用性を比較する第III相試験)にも症例を多く登録しました。
また、呼吸器グループで主導した
1)高齢者進行非小細胞肺癌に対するVinorelbine、Gemcitabine隔週投与後、ゲフィチニブを逐次投与する臨床第II相試験
2)VB、W期非小細胞肺癌に対するVinorelbineとCarboplatinの併用化学療法後Gemcitabineを逐次療法として追加する第U相臨床試験
3)局所進行非小細胞肺癌に対するDocetaxel / Cisplatin導入化学療法後Docetaxel 毎週投与併用下胸部放射線照射の逐次併用療法の検討
4)ゲフィチニブ奏効後の再発非小細胞肺癌症例に対する毎週投与パクリタキセルとゲフィチニブ併用療法
などの臨床研究が進行しています。
基礎的研究では、曽根がEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の感受性規定因子としての血漿中のVEGFが有用であることを見出し、また木村は血液中に混在している腫瘍由来のDNAを抽出し、EGFR遺伝子変異を検出しています。これは全世界的に大きな反響を得ています。新屋は工学部の長野教授グループとの共同研究で、温熱療法と選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬の併用の基礎的研究を進めました。この共同研究は現在も継続しています。また、丹保は、EGFR遺伝子変異・増幅が非小細胞肺癌の予後に大きな影響を与えると仮説し研究を続けています。
呼吸器の疾患は種類も病態も多様であり、教科書通りの患者は少なく、一人ひとりの患者の病態を考えながら診療しなくてはなりません。
つまり、「考えながら診療する能力」が求められる訳です。そこで研究、とくに学位研究は、呼吸器内科専門医となるために重要なステップとなります。
診療や外勤のため研究時間が十分に確保できない状況での研究活動は容易ではありませんが、できるだけ良い環境で研究ができるようにとスタッフと中堅メンバーも頑張っています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:12| 呼吸器内科