DIC&APSの病態・治療:金沢大学 血栓止血研究室グループ紹介(2)
市民公開講座:金沢大学 血栓止血研究室グループ紹介(1)から続く
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(第三内科)研究室紹介は、以下からもご覧いただけます。
1) 血液・移植研究グループ紹介
2) 呼吸器研究室グループ紹介
<血栓止血研究室>(2)
前回の血栓止血研究室紹介では、具体的な研究内容には言及しませんでしたので、今回から具体的内容を紹介させていただきます。
金沢大学第三内科血栓止血研究室は、一貫して「血栓症の克服」に向けて研究を進めています。
特に、
● 播種性血管内凝固症候群(DIC)病態解析と治療法の改善
● 抗リン脂質抗体症候群(APS)の病態解析・診療
● 血栓性疾患の病態解析
● 凝固異常症の遺伝子解析
などは、私達が最も力を入れているところです。
【播種性血管内凝固症候群】
播種性血管内凝固症候群(DIC)研究に関しては、動物DICモデルを用いた検討を行ってきましたが、私たちは、LPS誘発DICモデルと組織因子(TF)誘発DICモデルでは全く病態が異なり、前者は臨床の線溶抑制型DICに後者は線溶亢進型DICに類似した病態であることを指摘しました。
また、新規線溶阻止因子TAFIのDIC病態における役割を検討して、大変興味ある成績が得られました。 最近では、他疾患に用いられている某薬剤が、DICの臓器障害を劇的に改善するという刺激的な成績も得られました。
DIC治療ガイドラインに関しましては、金沢大学も大きく関わる形でその作成が終了し、ついに世に出ました(諸般の事情から、正確にはエクスパートコンセンサスとして世に出ました)。今後のDIC診療において、大きな意味を持つことになるでしょう。
<関連記事>
・播種性血管内凝固症候群(DIC):インデックスページ(図解シリーズ)
【抗リン脂質抗体症候群】
抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する基礎的検討、臨床研究につきましても従来より精力的にとり組んでいます。当院皮膚科、聖マリアンナ大学皮膚科、信州大学皮膚科などとの共同研究の結果、多くの原著論文を発信してきました。
抗リン脂質抗体症候群により死産を経験したことを公表し、その後、アスピリンとヘパリン注射によりお子様を授かった女優さんの影響か、不育症患者様の紹介、あるいは自分から希望しての受診が激増しています。
APS関連不育症については妊娠判明時より少量アスピリン内服とヘパリン皮下投与により80%以上の症例で生児を得ることができることが報告されています。
APSはいまだ不明の部分も多い疾患群ですが、徐々に解明され、コントロール可能となりつつある部分もあります。今後のさらなる医学の発展が期待されるところです。
<関連記事>
・抗リン脂質抗体症候群(インデックスページ)
・先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症
(続く)
先天性凝固異常症 & 大動脈瘤:金沢大学 血栓止血研究室グループ紹介(3)へ
【関連記事】
・抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法(アスピリン、ワーファリン)
・ヘパリン類 : フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ
【リンク】
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:32| 血栓止血(血管診療)