2009年06月11日
DIC診断基準と本態(図解40)
播種性血管内凝固症候群(DIC)診断基準(旧厚生省DIC診断基準)について議論する場合には、DICの本態についても考察しておく必要があります。
当然のことながら、DIC診断基準はDICの本態をきちんと評価するものである必要があります。
そもそもDICの本態とは何でしょうか?
1) 血小板数が低下することでしょうか:
いいえ違います。確かに典型的なDICにおいては血小板数が低下しますが、血小板数低下はDICの本態という訳ではなく、DICの結果です。典型的なDICにおいては消費性凝固障害の病態となりますが、その結果として血小板数や凝固因子(フィブリノゲンなど)が低下するのです。実際、代償性DICでは血小板数は低下いたしません。
2) FDPやDダイマーが上昇することでしょうか:
いいえ違います。確かに、FDPやDダイマーの上昇は、血小板数低下とともにDICの最も重要な検査所見であることは万人が認めることでしょう。しかし、FDPやDダイマーの上昇は、DICの結果として微小血栓が多発して、さらにその血栓が分解された産物です。DIC病態の最終段階を見ているとも言えます。
3) PTが延長することでしょうか:
いいえ違います。確かに、PT延長はDICでしばしば見られる検査所見です。しかし、PTの延長がDICのためであったとしても、DICの消費性凝固障害の結果です。更に、PTは、ビタミンK欠乏症や肝不全などの多くの他の要素によっても延長することが良く知られています。DICに特異的な検査所見では決してありません。
4) SIRSの存在はDICに必要でしょうか:
いいえ違います。確かに、感染症に合併したDICにおいて、SIRSは重要な要素です。しかし、血液疾患(造血器悪性腫瘍など)、動脈瘤、固形癌などに合併したDICにおいては、SIRS基準を満たすことはまずありません。
たとえば、急性前骨髄球性白血病(APL)に凝固異常を合併して脳出血をきたしたような病態であってもSIRS基準を満たすことはありません。このような場合にはSIRSがないのでDICとは言わないのでしょうか?そのようなことはありません。APLの凝固異常も、もちろんDICです(むしろAPLの凝固異常は究極のDICとも言えるでしょう)。
さて、世界中に存在するDIC診断基準に、欠けていたものは何でしょうか。。。。
(続く)
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【DIC関連のリンク】
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中!!)
血液凝固検査入門(全40記事)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:41| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解) | コメント(0)