金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年07月09日

金沢大学血液内科 病棟実習試験:血栓止血領域過去問解説

金沢大学医学部では、医学部6年生の内科学卒業試験(病棟実習<BSL>試験)が平成21年9月7日から9月18日に予定されています。

少し気が早いですが、過去問(平成20年9月5日施行の試験問題)解説をアップしたいと思います。
血液内科の血栓止血領域です。

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血栓止血関連マーカーの変動を示した下記の記載のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

疾患・病態 出血時間 PT APTT HPT
血友病A 延長 正常 延長 正常
ビタミンK欠乏症 正常 延長 延長 正常
アスピリン投与 延長 正常 正常 正常
von Willebrand病 延長 延長 正常 正常
血小板無力症 延長 正常  延長 正常 


PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
HPT:ヘパプラスチンテスト


この問題は、金沢大学血液内科の血栓止血領域では、ほとんど全ての試験で必ずのように出題される試験問題パターンです。またこの問題かと言われそうですが、血栓止血領域では、凝血学的検査(凝固検査)の評価ができることが極めて重要です。今後とも、ほとんど全ての試験で毎回出題されるでしょう。


血友病A
血友病Aは、第VIII因子の先天性欠損症です。APTTが延長しますが、PTや出血時間は正常です。ヘパプラスチンテスト(HPT)は、ビタミンK依存性凝固因子(VII、IX、X、II)のうち、VII、X、II因子を反映します。
血友病Aでは、HPTは正常です。


ビタミンK欠乏症
ビタミンK依存性凝固因子である、VII、IX、X、II(この順番は半減期の順番です。VIIが最も半減期が短いです)の活性が低下して出血傾向をきたします。
典型例では、PTAPTTともに延長します。もちろん、ビタミンK依存性凝固因子を総合的に評価するマーカーであるHPTも低下します。
ビタミンK欠乏症では、出血時間は正常です。


アスピリン投与

アスピリンは血小板機能を低下させます。出血傾向をきたすことがありますが、上手に使いますと血栓症(特に動脈血栓症)の治療薬になります。
出血時間は延長しますが、PTAPTT、HPTは正常です。
この問題の正解選択肢になります。


von Willebrand病
von Willebrand因子(vWF)が先天性に低下している出血性素因です。vWFには、2つの大きな役割があります。

vWFの役割
1)    血小板粘着に必要
2)    第VIII因子のキャリアー蛋白

von Willebrand病
では、血小板粘着の機能が発揮されませんので、出血時間は延長します。
また、von Willebrand病では、第VIII因子活性も低下しますのでAPTTが延長します。
少なくとも国試、卒試レベルで、出血時間(血小板関連検査)もAPTT(凝固検査)も延長するのは、von Willebrand病くらいでしょう。
PT、HPTは正常です。


血小板無力症
血小板機能が低下した先天性出血性素因です。出血時間は延長します。しかし、血液凝固には問題ありませんので、PT、APTT、HPTは正常です。


出血時間はどのような病態で延長するかに関しては、100%理解している必要があります。
必ず確認しておきましょう。


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【リンク】

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:57| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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