出血傾向(医療面接):医学コアカリ対応(3)
出血傾向(紫斑、関節内出血):医学コアカリ対応(2)からの続き
【医療面接と出血傾向】
・ 自覚症状:
出血の部位。特に、関節内出血は血友病に特徴的ですので、関節腫脹や疼痛の経験がないか確認しておく必要があります。また、von Willebrand病では幼少時からの粘膜出血(鼻出血など)が特徴的です。鼻出血では、片側性か両側性かの確認も重要です。片側性の場合には耳鼻科疾患の可能性がありますが、両側性の場合には全身性出血性素因を強く疑うことになります。
・ 先行する感染症の有無:
急性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、アレルギー性紫斑病(Schoenlein-Henoch紫斑病)では、先行感染症がみられる場合があります。
・ 出血症状出現の時期:
幼少時からの出血傾向は先天性出血性素因を疑います。
・ 外傷時、手術時、抜歯時の異常出血の有無:
先天性出血性素因では、過去の外傷時、手術時、抜歯時に異常出血がみられることが多いのが特徴です。
・ 家族歴:
血縁者で出血しやすい者がいる場合には、血友病やvon Willebrand病などの先天性出血性素因であることが多いです。なお、血友病は伴性劣性遺伝のために男性のみに発症します(母親がキャリアーのため母方から遺伝)。von Willebrand病は常染色体優性遺伝するため、男女ともに発症しえます。
・ 内服薬の確認:
NSAID(非ステロイド系消炎鎮痛薬)(アスピリンなど)の内服では、血小板機能が低下して出血傾向をきたすことがあります。また、虚血性心疾患や脳梗塞患者では、抗血小板薬を内服していることがあり出血傾向の原因となりえます。
・ 輸血歴、肝疾患の有無:
肝硬変では、血小板数の低下、凝固因子の低下をきたし、出血傾向をきたすことがあります。
・ ビタミンK欠乏症の可能性について:
ビタミンK欠乏症になりやすいTriasである以下の要素がないかどうか確認します。
1) 食事摂取量の低下:ビタミンKの摂取も低下するためです。
2) 閉塞性黄疸:ビタミンKは脂溶性ビタミンですので、胆汁が存在しないと吸収されません。
3) 抗生剤の投与:ビタミンKは体内の腸内細菌から産生されています。抗生剤によって腸内細菌が死滅しますとビタミンK欠乏症になりやすいです。
(続く)
【関連記事】
ノボセブン(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤):究極の止血剤。
血液凝固検査入門(インデックスページ) ← クリック! 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンクしています。
金沢大学第三内科HPへ
金沢大学第三内科ブログへ
研修医・入局者募集へ
研修医の広場(金沢大学第三内科) ← 当科での研修の様子をご覧いただくことができます。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:07| 出血性疾患 | コメント(0)