金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年08月02日

ワルファリン内服と皮膚壊死:先天性プロテインC欠損症

ワルファリン(商品名:ワーファリン)は、血栓性疾患に頻用される抗血栓療法治療薬です(PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?)。


<参考>

抗血栓療法

1)抗血小板療法:アスピリンなど。

2)抗凝固療法:ワーファリンなど。

3)線溶療法:ウロキナーゼ、t-PAなど。



ビタミンK依存性蛋白

1)凝固VII、IX、X、II因子:半減期の順番です。第VII因子が最も半減期が短いです(ビタミンK依存性凝固因子:血液凝固検査入門(16))。

2)プロテインC、プロテインS :これらの凝固阻止因子もビタミンK依存性です。

3)オステオカルシン:骨代謝と関連したビタミンK依存性蛋白です。ワーファリンには再奇形性がありますが、オステオカルシンの活性を低下させることが大きな要因です。


不思議なことにワーファリンの使用によって、かえって血栓傾向が悪化する場合があります。
以下のような病態です。



【ワルファリン内服による皮膚壊死】

・プロテインC(Protein C:PC)の血中半減期はプロトロンビンや第X、第IX因子に比べて短いため、ワルファリン投与開始1〜2日後にPC活性が急激に低下します(電撃性紫斑病とワーファリン:血液凝固検査入門(21))。

・先天性PC欠損症症例(ヘテロ接合体では、元々PC活性が半減しています)に対してワルファリンを投与しますと、PC活性は著しく低下して0%に近づきます。

・このため、先天性PC欠損症ではワルファリン投与に伴い、過凝固状態となり微小血栓が多発して皮膚壊死(warfarin-induced skin necrosis)をおこすことがあります。電撃性紫斑病の病態です。二次的に出血して紫斑が見られますが、本態は出血ではなく著しい血栓傾向です。

・出血と血栓症という相反する病態が共存するという観点からは、播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態と相通ずるかも知れません。

 【シリーズ】先天性血栓性素因アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症

1)病態 
2)疫学 
3)症状 
4)血液・遺伝子検査  ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断 
6)治療

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:42| 血栓性疾患 | コメント(0)

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