出血傾向(血液検査):医学コアカリ対応(5)
【検査と出血傾向】出血傾向患者における検査のポイント
出血傾向でまず最初に行うべき血液スクリーニング検査は、以下の1)〜5)になります。
ただし、以下の検査ではスクリーニングされない出血性疾患もあることも知っていた方が良いです。
具体的には、先天性第XIII因子欠損症、先天性α2PI欠損症などは、以下の検査ではスクリーニングされません。この2疾患は極めてまれな疾患ですので、全ての出血傾向の患者さんでチェックするのは現実的ではありません。まずは、以下の6項目で良いでしょう。
1) 血算(血小板数を含む)
2) 出血時間
3) プロトロンビン時間(PT)
4) 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
5) フィブリノゲン
6) FDP(Dダイマー)
【血小板数 & 血小板機能】
・ 血小板数低下がみられた場合:
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、再生不良性貧血、急性白血病、肝硬変(肝硬変ではPT&APTT延長所見もあります)などが相当します。
・ 血小板数低下がみられない場合:
1) 出血時間延長(+):
血小板機能の低下した病態・疾患を考えます(血小板無力症、von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群、NSAID内服、尿毒症など)。なお、von Willebrand病では、出血時間のみでなくAPTTも延長します。
2) 出血時間延長(-):
血小板機能は正常であることを意味します。PT、APTTなどの凝固検査で評価します。全ての凝固検査が正常であれば、老人性紫斑病、単純性紫斑病などが相当します。
凝固検査に異常があれば、下記で鑑別します。
【凝固・線溶】
・ PT正常 & APTT延長:
血友病A(第VIII因子の欠損)、血友病B(第IX因子の欠損)、von Willebrand病(von Willebrand病では出血時間も延長します)など。
・ PT延長 & APTT正常:
先天性第VII因子欠損症など。
・ PT延長 & APTT延長:
ビタミンK欠乏症、先天性第X、V、II因子欠損症、無フィブリノゲン血症、肝硬変(肝硬変では血小板数低下もみられます)など。
・ FDP、Dダイマー上昇:
播種性血管内凝固症候群(DIC)を考えます。典型的なDICでは、血小板数低下、フィブリノゲン低下、PT&APTT延長と言った所見もみらます。
なお、今回の記事は出血傾向の記事ですが、出血傾向に限定しないのであれば、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)でも、FDPやDダイマーの上昇がみられます。
さらに追加しますと、出血傾向ではなく血栓性素因ですが、抗リン脂質抗体症候群(ループスアンチコアグラント陽性)症例でもAPTTは延長することがあります。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:31| 出血性疾患 | コメント(0)