金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年10月15日

医師国家試験対策:統合試験過去問より(胸部異常陰影:上肺野)

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金沢大学医学部統合試験(呼吸器内科)過去問を続けます。

〜過去問の紹介と解説の記事(兼:医師国家試験対策)〜
    

                                    

次の分を読み、1、2の問いに答えよ。

 19歳、女性、東南アジアからの留学生。胸部異常陰影と胸痛の精査目的に来院した。

現病歴

:10月中旬に保健所で受けた結核管理検診の胸部単純X線検査で、右上肺野に異常陰影を指摘され、結核再々発疑いとして、即日紹介受診となった。9月初旬より、湿性咳嗽と認めていたが、発熱や寝汗などの自覚症状はなかった。誘発喀痰検査で、抗酸菌塗抹陰性を確認し、結核菌のPCR検査と培養検査を提出して、クラリスロマイシンを処方して3日後に予約受診とした。しかし、吸気時に増強する右側胸部から前胸部にかけての痛みが出現したため、予約前日に受診し、精査加療目的で入院となった。

既往歴:肺炎(3歳)。3年前、母国で肺結核としての治療歴あり。2年前に来日した時にも、千葉で肺結核再燃として再度結核の治療を受けた。ただし、2回のエピソードとも結核菌は検出されていない。

現 症:意識は清明。身長 163cm、体重 51 kg。体温 37.1℃。座位で脈拍119/分、血圧92 / 58 mmHg。心音に異常なし。呼吸音は右前胸部にて吸気時にcoarse cracklesを聴取。腹部は平坦で圧痛や叩打痛はなく、肝・脾は触診しない。下肢に浮腫を認めない。

入院時検査所見
尿所見:蛋白(—)、糖(—)。

血液所見:WBC 7,700 /μl (Neu54 %, Eos 6 %, Bas 0 %, Mon 10 %, Lym 30 %)、RBC 442x104 /μl、Hb 13.2 g/dl、Ht 39.7 %、Plt 34.3x104 /μl。


血清生化学所見:総蛋白7.7 g/dl (alb 57.9 %、α1-gl 3.8%、α2-gl 13.3%、β-gl 9.0%、γ-gl 15.1 %)、BUN 11 mg/dl、Cr 0.5 mg/dl、AST 13単位(基準40以下)、ALT 10 単位(基準35以下)、LDH 411単位(正常176〜353)、ALP 177 単位(基準330以下)、γ-GTP 9 単位(基準40以下)、T-Cho 168 mg/dl、TG 124 mg/dl、Na 138mEq/l、K 4.2 mEq/l、Cl 105 mEq/l、血沈(1時間値)91 mm、CRP 4.2mg/dl、FBS 120 mg/dl、フィブリノゲン 594 mg/dl、総IgE値 1100 IU/ml。

動脈血ガス分析所見: pH 7.413、Pco2 38.1 torr、Po2 70.0 torr、HCO3- 24.3 mmol/l。

喀痰検査:細菌培養 常在菌のみ。

細胞診 陰性。
結核菌の塗抹、培養、核酸増幅法ともに陰性、炎症細胞分画 好中球67.7%、リンパ球4.0%、好酸球26.0%、マクロファージ3.3%。
ツ反:陰性。

胸部X線写真 入院時(別冊No. 1 A, B)および治療経過(別冊No. 1 C)を別に示す。

レントゲン1A
レントゲン1B
レントゲン1C


1)最も考えられるのはどれか。
           
a 肺結核                    
b 肺非結核性抗酸菌症                    
c アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
d 肺癌
e 細菌性肺炎


2)確定診断のために必要な検査はどれか、三つ選べ。

a 喀痰真菌培養検査                        
b 肺動脈造影検査                
c 特異的IgE抗体検査            
d 沈降抗体検査                
e 気道過敏性検査

 

【作問のねらい】

繰り返す胸部異常陰影(本例では3回)を呈する疾患に関する問題である。

上肺野優位に発症する疾患を問う問題でもある。過去2回のエピソードでは肺結核と診断されているが、その証拠(結核菌の検出)は得られていない。

気管支喘息の既往はないが、今回入院時の検査にて、末梢血好酸球増加、総IgE値高値、喀痰中好酸球増加などの所見より、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を疑うことができる。

設問2は、診断のために必要な検査についての問題であり、喀痰真菌培養にてアスペルギルスが検出され、アスペルギルスに対する特異的IgE抗体と沈降抗体が陽性であれば、その疑いは強くなる。

本問題では、治療によって異常陰影がどのように軽快したかを示してあるが、軽快中のCT写真にて本症に特徴的な中心型気管支拡張の所見がみられる。

【正答】

1)c

2)a、c、d

 

 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:47| 医師国家試験・専門医試験対策