金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2009年12月24日

血栓止血の臨床:血液内科試験問題

金沢大学 血液内科系統講義試験(問題の紹介と解説)を続けたいと思います。


【設問】

血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか。一つ選べ。

a.    心原性脳塞栓の再発予防としては、ワルファリンによる抗凝固療法が有効である。
b.    老人性紫斑病に対しては、ビタミンKの投与が半数例で有効である。
c.    アレルギー性紫斑病に対しては、ビタミンCの投与が半数例で有効である。
d.    閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては、ビタミンKの内服が有効である。
e.    第VIII因子インヒビターの出血に対しては、低分子ヘパリンが有効である。

 


【解説】

a. 心房細動は、脳梗塞(心原性脳塞栓)の重要な危険因子です。抗血栓療法を行って、脳梗塞の発症を予防する必要があります(抗血栓療法の分類)。

心房細動がありますと、心内に血液の滞留を生じて、心内血栓を生じます(それが脳動脈に飛んでしまいますと、脳梗塞です)。血流が遅い環境下の血栓ですので、凝固血栓です。

ワルファリンによる抗凝固療法が血栓症発症予防に有効です(アスピリンは血小板血栓に有効です)。

b. 老人性紫斑病は放置して支障ありません。全ての血液検査が正常です。

c. アレルギー性紫斑病では、通常経過観察で自然軽快します(例外はありますが)。

d. ビタミンKは脂溶性ビタミンです。その吸収のためには胆汁に存在が必要です。閉塞性黄疸では胆汁が出ませんので、確実に効果を発揮させるために、経静脈的(点滴)で投与する必要があります(ビタミンK欠乏症)。

e.  第VIII因子インヒビターには、

(1)先天性血友病Aの合併症としてみられる場合と、

(2)後天性血友病の場合があります。

いずれにしましても、出血性疾患です。低分子ヘパリンを投与しますと、出血を悪化させます。

国家試験であれば、禁忌肢としたいところです。

 

【正答】 a

 


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:14| 医師国家試験・専門医試験対策 | コメント(0)

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