血友病に対する抗血栓療法
出血と血栓症は、相反する病態です。
この相反する病態が共存する場合がありますが、この際の治療は大変に難かしいです。
出血の治療を行おうとしますと血栓症にはマイナスに作用しやすくなりますし、血栓症の治療を行おうとしますと出血にはマイナスに作用しやすくなるからです。
出血と血栓症の共存
1)播種性血管内凝固症候群(DIC)
2)特発性血管内凝固症候群(ITP)と抗リン脂質抗体症候群(APS)の合併
3)TTP、HUS、HELLP
4)電撃性紫斑病
5)その他
血友病においては、適切な補充療法によりQOL、予後は大きく改善しました。
それに伴い、血友病の患者さんが血栓性疾患(脳梗塞、心筋梗塞など)に罹患されて、その加療(抗血栓療法)が必要になる場合が増えてきました。
血友病と血栓性疾患の合併は、まさに出血性疾患と血栓性疾患の共存ということになります。
最近、Blood誌に、このテーマをとりあげた論文が出ましたので、紹介させていただきたいと思います。
「高齢者血友病における加齢関連疾患の治療」
著者名:Mannucci PM, et al.
雑誌名:Blood 114: 5256-5263, 2009
<論文の要旨>
血液凝固因子製剤による定期的な補充療法が可能な国においては、血友病の平均寿命は一般男性に近付いてきています。
そのため血友病治療センターにおける次の目標は、高齢者においても適切な健康管理を行うことです。
高齢者では血友病と関連した病床(関節症、慢性疼痛、製剤由来感染症)のみでなく、心血管疾患や悪性腫瘍などの加齢と関連した疾患も問題となります。
心血管疾患では抗血栓療法が必要になることがあり、それに伴ない血友病の止血能を更に悪化させる可能性がありますが、証拠に基づいた治療ガイドラインはなく、経験的に補充療法の強化が行われているのが現状です。
現時点では、高齢者血友病患者が他の疾患に羅漢した場合には、非血友病患者と同様の治療がなされるべきと考えられます。
ただし、観血的治療が必要になった場合や止血能を低下させる薬物が投与させる場合には、補充療法を強化する必要があります。
さらに、急性冠症候群や非弁膜症性心房細動のような心血管疾患に取り組むためには、より詳細な補充療法スケジュールを考慮する必要があります。
血友病症例における抗血栓療法を真剣に考慮する必要がある時代になったということは、それくらいに、血友病の止血コントロールが適切に行われるようになってきているということではないかと思います。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:01| 出血性疾患 | コメント(0)