アスパラギナーゼ投与と中枢神経系の血栓症
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L-アスパラギナーゼ(ASP)は、急性リンパ性白血病などのリンパ性悪性腫瘍に対して使われる抗腫瘍剤です。
この薬剤の使用にあたって使用すべき点は、凝固因子活性(フィブリノゲンなど)が低下して出血しやすくなる一方で、凝固阻止因子(アンチトロンビンなど)も低下して血栓症も発症しやすくなる点です。
この点に関する論文は今までもありましたが、最近Blood誌に報告がありましたので、紹介させていただきます。
「ALLに対するアスパラギナーゼ投与とCNS血栓症&出血—FFPとクリオプレチピラートの効果—」
著者名:Lesleigh S, et al.
雑誌名:Blood 114: 5146-5151, 2009
<論文の要旨>
L-アスパラギナーゼ(ASP)を投与しますと、アンチトロンビン(AT)やフィブリノゲン(Fbg)が低下することが知られています。その結果、中枢神経系での血栓症(CNST)や出血をきたすことがあります。
Izaak Walton Killam Health Centre(IWK)では、ASP投与患者ではATとFbgの測定が行われており、血栓症や出血予防目的に新鮮凍結血漿またはクリオプレチピラート(CRY)による補充が行われています。
この治療法が、急性リンパ性白血病(ALL)症例にASPを投与した場合の上記合併症を予防するかどうか検討するために、予防治療が行われていないBC Childrens Hospital(BCCH)での症例と比較しました。
1990〜2005年で、IWKにおける240症例(FFPは37%、CRYは68%に投与されていました)、BCCHにおける479症例が対象となりました。
その結果、BCCHの7症例(1.5%)が静脈系CNSTを発症していましたが、IWKでは0症例でした(しかし、推計学的にFFPやCRYの効果は証明されませんでした)。
CNSTは、全て寛解導入療法中に発症しました。6症例では抗凝固療法下にASPが継続されました。全7症例は、寛解導入されました。血栓症発症の危険因子は、NCIクライテリアの高リスクALLであることのみであり、性、年齢、人種、BMIは無関係でした。
FFPもCRYもCNSTを有意に阻止しなかったため、予防治療を全ALL症例に対して投与することは推められないものと考えられました。
ただし、ALL高リスク症例における寛解導入療法時に補充療法を行うことは有用かも知れないと総括しています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:14| 出血性疾患