金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2010年02月07日

異常フィブリノゲン血症:出血と血栓症の共存

最近の記事でも、出血と血栓症の両者が共存する病態の治療は難しいと書かせていただきました。

ベクトルが180度反対方向に向いている病態が共存している訳ですから、一方の治療をしようとしますと、もう一方の病態には悪影響になる訳です。

出血と血栓症の両者が共存する病態の代表的なものとしては下記があります。

出血と血栓症の共存

1)播種性血管内凝固症候群(DIC)
2)特発性血管内凝固症候群(ITP)抗リン脂質抗体症候群(APS)の合併
3)TTPHUS、HELLP
4)電撃性紫斑病
5)その他

上記の他に、異常フィブリノゲン血症も、出血と血栓症の両者が共存する病態として知られています。
今回は、この疾患の最近の論文を紹介させていただきたいと思います。



「先天性異常フィブリノゲン血症の臨床症状と5種類の構造異常」

著者名:Miesbach W, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis   21: 35-40, 2010.

<論文の要旨>

先天性異常フィブリノゲン血症はまれな凝固異常で、フィブリノゲン3遺伝のうち少なくとも1ヶ所で変異がみられます。

著者らは、12家系37例についての検討を行っています。

まず5種類の遺伝子異常が確認されました(αR16C、γA357T、γ318-319del、γM310T、αR16S)。年齢の中央値は51歳(11−86)でした。女性62%のうち、3例(13%)では1回以上の自然流産を経験していました。50%以上の症例では、1回以上の高度な出血を経験していました。

また、19%の症例(9/37症例;全員50歳以上)では、1回以上の動脈または静脈血栓症の既往がありました。血栓症の既往のある症例のうち、2例(7%)は深部静脈血栓症で、7例は動脈血栓症で、5例(14%)は両方でした。

凝血学的所見では、APTTよりもPT延長の方が高頻度にみられました。
このことは、フィブリノゲンの重合遅延と関連しているのかも知れません(APTTの測定系ではカルシウム添加前に接触相を活性化を行うため影響がみられにくいのです)。





【リンク】

血液凝固検査入門(図解シリーズ)

播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10| 出血性疾患 | コメント(0)

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