内分泌疾患における凝固線溶異常:後天性vWDなど
血友病やvon Willebrand病と言えば、通常は先天性出血性素因の代表的疾患ですが、実は後天性血友病や後天性von Willebrand病も知られており、最近何かと話題です。
また、内分泌疾患の中には、血栓止血異常をきたす疾患があることが知られています。
最近の論文を紹介させていただきたいと思います。
「内分泌疾患における凝固線溶異常」
著者名:Targher G, et al.
雑誌名:Semin Thromb Hemost 35: 605-612, 2009.
<論文の要旨>
多嚢胞性卵巣症候群、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、原発性副甲状腺機能亢進症、巨人症、下垂体前葉機能低下症、成長ホルモン分泌不全症においては、凝固線溶異常がみられることが知られています。
今後の詳細な検討は必要であるものの、臨床症状が明確な甲状腺機能低下症においては出血傾向をきたすようです。一方、その他の内分泌疾患においては血栓傾向となります。これらの内分泌疾患における凝固線溶異常は通常軽度〜中等度であるが、まれに高度である場合があります。
特に、顕性の甲状腺機能低下症における出血症状の原因は、主として後天性von Willebrand病(vWD)(1型)の病態となることが知られており、甲状腺ホルモンによる補充療法を行うとこの病態は改善します。上記の内分泌疾患で、時に高度な凝固異常を合併することを理解しておくことは、適切に対応する上でも重要と考えられます。
【参考】
後天性vWDの原因
・ 多発性骨髄腫、単クローン性ガンマグロブリン血症
・ リンパ腫
・ 骨髄増殖性疾患(ET、PV)
・ ウイルムス腫瘍
・ 先天性心疾患
・ 尿毒症
・ 甲状腺機能低下症
・ 薬物(バルプロ酸)
・ SLE など。
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33| 出血性疾患