von Willebrand病と過多月経
von Willebrand病は、血友病と並んで有名な、先天性出血性疾患です(血友病とvon Willebrand病の比較)。鼻出血などの粘膜出血が特徴です。検査所見では、出血時間の延長、APTTの延長などがみられます。
管理人も何人かのvon Willebrand病の患者さんの診療にあたっていますが、von Willebrand因子活性が10%未満に著減している方でも、全くと言って良いほど日常生活で出血はみられません。
例えば、出産時大出血の原因精査を行って本疾患の診断がなされた方がおられますが、出産のその時までほとんど出血症状は見られませんでしたし、今もほとんど出血症状はありません。
このように、本疾患であるにもかかわらず診断のなされていない、いわゆる隠れvon Willebrand病の方が少なくないのではないかと思っています。
女性特有の出血症状とvon Willebrand病の関係を論じた報告がありましたので、紹介させていただきます。
「女性におけるvon Willebrand病の特徴と診断」
著者名:James AH.
雑誌名:Thromb Res 124 Suppl 1 : S7-10, 2009.
<論文の要旨>
遺伝形式を考慮しますと、von Willebrand病(vWD)は男女同数発症するはずです。しかし、臨床的には男性よりも女性の方が診断される症例数が多いことが知られています。
この理由としては、女性のvWDでは過多月経や出産時出血と言った症状が見られることがあるからです。過多月経は、vWDにおいて最も見られやすい症状の一つで、過多月経を契機にvWDと診断されることは多いです。
その他の産婦人科領域の出血症状としては、出血性卵巣嚢胞、子宮内膜症、出産後出血などが知られています。
過多月経の原因としてvWDがありうることに関しては、産婦人科医を含む臨床医においてあまり知られていないのが現状ではないかと思います。しかし、簡単なスクリーニング検査でvWDの可能性をチェックすることができますので、今後の啓蒙が必要と思われます。
過多月経に対しては、正しい知識のもとに初めて適切な薬物療法や外科治療を行うことが可能です。
また、手術時や出産時において適切な補充療法を行うことで、出血の合併症を阻止することが可能です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14| 出血性疾患